まず、成長期のウナギ(黄ウナギ)がどのような広さの浮石間隙の空間を好むかが解明された。今回の調査では、長径10cm・20cm・30cmの石を詰めた石倉カゴを汽水域に2基ずつ(計6基)設置し、これらを利用する黄ウナギの個体数の比較が行われた。

次に、どの石倉カゴが中長期にわたってウナギを定着させ、その成長を促すかの検証が実施された。今回の調査では、いずれかの石倉カゴから捕獲された全個体に色素標識を施し、再捕獲時の標識パターンをもとに石倉カゴ間の移動履歴や肥満度の推移が確認された。

  • 石倉カゴから捕獲されたウナギ。胸鰭後端付近に色素標識が施されている

    石倉カゴから捕獲されたウナギ。胸鰭後端付近に色素標識が施されている(出所:九大プレスリリースPDF)

最後に、各石倉カゴにおける餌環境を調べるため、ウナギが好んで食べる甲殻類、小型魚類の個体数および湿重量が調査された。

その結果、厳冬期を除く2020年8月~2021年7月の1年間を通じ、黄ウナギは小サイズ(長径10cm)の石倉カゴから最も多く確認されたという。これは、黄ウナギが入り込むことのできるなるべく小さな間隙を好むことを示唆しているとする。

また、小サイズの石倉カゴから新規で捕獲された個体が再捕獲される確率は、ほかの石倉カゴからの新規個体と比べて2.0倍~3.7倍の高さであることが明らかにされた。このことから、狭い浮石間隙は、ウナギの一時的なシェルターのみならず、1か月以上の中長期にわたる定着場所として機能することもわかった。

  • 調査で用いられた石倉カゴ

    調査で用いられた石倉カゴ(出所:九大プレスリリースPDF)

併せて、石倉カゴに定着した黄ウナギの肥満度については、その体サイズや季節にかかわらず、初回捕獲時よりも再捕獲時に高い傾向が認められたという。さらに、定着率の高かった小サイズの石倉カゴには、ほかの石倉カゴと比べて2倍以上のカニ類および小型魚類が棲み着いており、これらの餌生物が黄ウナギの肥満度を向上させた可能性が見出されたとする。

研究チームによると今回の研究によって、河川汽水域から失われた浮石の間隙構造を復元することで、ウナギとその餌生物の定着、さらにはウナギの成長が促される可能性が示された。

また今後について、石倉カゴへの定着個体と外部環境で生活するウナギの個体間で、食性・索餌コスト・成熟までの年数などを比較することで、浮石の間隙構造がウナギの成長・成熟にもたらす効果をさらに明らかにする必要があるとした。