東海大学は1月17日、変形性膝関節症の臨床研究において、多指症患者の除去手術時に廃棄される軟骨組織から作製した「同種軟骨細胞シート」を患者10名の膝関節の軟骨欠損部へ移植し、その全例で術後1年の安全性・有効性を確認したと発表した。
同成果は、東海大 医学部医学科整形外科学/同・大学大学院 医学研究科運動器先端医療研究センターの浜橋恒介准教授、同・佐藤正人教授を中心に、防衛医科大学校、国立医薬品食品衛生研究所、DNAチップ研究所、国立成育医療研究センター、東京女子医科大学、米・ユタ大学の研究者ら計22名の研究者が参加した国際共同研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」系の損傷した組織や器官の修復・置換・再生に関する全般を扱うオープンアクセスジャーナル「npj Regenerative Medicine」に掲載された。
変形性膝関節症は、進行性かつ難治性で、それに加えて罹患率が高い関節の変性疾患だが、現時点では根治的な治療法は開発されていない。そうした中で研究チームが2011年から臨床研究を行っているのが、患者自身の細胞から作成した軟骨細胞シートを移植するという治療法だ。2019年には、変形性膝関節症の軟骨欠損に対する世界初の細胞シートを用いた関節軟骨の再生医療として、「先進医療B」に承認された。
しかし、自己細胞シートを作製する方法は、組織採取のための手術が必要なことが課題だという。また、作製できる細胞シートの枚数が限られているため、適応条件として軟骨欠損部の大きさに制限(臨床研究では4.2cm2未満、先進医療では8.4cm2未満)があったとする。
軟骨組織の主な特徴として、拒絶反応が起きず、自分のものでない組織や細胞が排除されない「免疫寛容」がある。そこで研究チームが着目したのが、1000人に1~3人ほどの割合で生じる疾患で、指が6本以上形成される「多指症」の除去手術において廃棄される軟骨組織だったという。
切除された指関節の軟骨から単離された軟骨細胞に対し、拡大培養を行って凍結保存する。そして各種の安全性検査を実施した上で、免疫不全動物の膝軟骨欠損部分への細胞シートの異種移植によって有効性が確認できた細胞を使用して、同種軟骨細胞シートが作製された。