最後に、6月以降に個人的事柄が急増した理由を調べるため、(A)医療従事者の接種開始(2月)、(B)高齢者の接種開始(4月)、(C)職域接種開始(6月)、(D)東京オリンピック(7月)といった主要イベントが、ツイートされる話題に与える影響の分析が行われた。その結果、(C)職域接種、(D)東京オリンピックの2つのイベントがツイートに与える影響が大きいことが明らかになった。また特に、職域接種が開始された2021年6月21日以降に個人的事柄の割合が急増加したという。この結果は、多くの人がワクチン接種を受けられるようになったこの日以降に、ユーザの興味・関心が個人的事柄に集中したことを示唆しているとする。

  • (左)ワクチン関連ツイートの主要4テーマの割合の月ごとの変化。6月以降、個人的事柄(赤)についてのツイートの割合が急上昇していることが見て取れる。(右)職域接種開始(2021年6月21日:縦の点線)前後における、ワクチン関連ツイートの主要4テーマにおける割合の日ごとの変化

    (左)ワクチン関連ツイートの主要4テーマの割合の月ごとの変化。6月以降、個人的事柄(赤)についてのツイートの割合が急上昇していることが見て取れる。(右)職域接種開始(2021年6月21日:縦の点線)前後における、ワクチン関連ツイートの主要4テーマにおける割合の日ごとの変化(出所:共同プレスリリースPDF)

今回の結果から、職域接種が始まると同時にユーザの関心がワクチン接種の個人的な体験に集中し、接種後の体調や副反応に対する準備など、接種する上で重要な情報がTwitter上で共有されたことが示されているとした。

ソーシャルメディアの問題として、陰謀論や偽情報の拡散によるワクチン接種に与える負の影響も危惧されたが、今回の分析では陰謀論のツイートはあまり見られなかったことから、Twitterはワクチン接種を阻害する要因にはならなかったことが推測された。以上のことから研究チームは、Twitterが日本における迅速なワクチン接種率向上の一因になった可能性が示唆されるとする。

また今後について、今回のようなデータ解析技術を発展させることで、公衆衛生などの政策決定を行う上で重要となる人々の気持ちや興味・関心を推測する手段として、ソーシャルメディアのデータを分析し活用することが期待されるとしている。