その結果、自宅近隣の歩きやすさなどの主観的な建造環境への高い認知は、うつ症状の発症リスクの低下と関連することが示されたという。さらに、建造環境の認知とうつ症状の関連は、女性と男性で異なることが明らかにされた。女性では、公共交通機関へのアクセスや交通に関した安全性に対する高い認知が、うつ症状の発症リスクを低下させる要因だったのに対し、男性では、犯罪に対する安全性の認知の高さが、うつ症状の発症リスクの低下と関連していたとする。一方、客観的に評価された建造環境指標とうつ症状の関連は認められなかったとした。
これらの調査結果は、自宅近隣の建造環境デザインは、複数の行動的・社会的経路を通じて、うつ症状に影響を与える可能性があることを示唆しているという。自宅近隣の歩きやすさなどの認知を改善すること、そして公共交通機関へのアクセスや犯罪、交通に関した安全性の認知を向上させるなど、主観的な建築環境への認知を高めることが、日本人中年者のうつ症状の改善に重要であると考えられると研究チームでは説明している。
なお、今回の研究成果について研究チームでは、メンタルヘルスの増進に向けた建造環境を明らかにしていくための今後の研究に対する多くの示唆を含んでおり、コロナ禍の影響もあって世界中の多くの人々がうつ病を含めた精神疾患に苦しんでいる昨今、メンタルヘルスの増進に寄与する「街づくり」デザインの解明が期待されるとしている。