物理とデジタルの「プレゼンス(存在感)格差」
こうした働き方の変化を背景に、ビジネスパーソンの「プレゼンス(存在感)」も変わりつつあります。どうしても、オフィスに出勤している人の物理的なプレゼンスの方が、リモートワークを選択した人のプレゼンスよりも高くなりがちです。そこには、「プレゼンス格差」が出てきています。
会議の場に「物理的に存在できない」デジタル社員やリモート社員がプレゼンスを発揮するには、リーダーや同僚と常に連絡の取れる状態でなければならず、そうでなければ。不在と認識されてしまうといったアンコンシャス・バイアスが生まれてしまっています。
そして、オンライン会議では音声や映像の「プレゼンス」がリモートワーカーの「プレゼンス」に直結するようになってしまいました。音声や映像が乱れている人、あるいはつながりにくくずっと画面をオフしている人の「プレゼンス」は下がりがちです。
Polyが2,500人以上のマネージャーを対象に行った調査では、60%が「社員がオフィスにいない場合、キャリアアップに必要な人間関係を築くことができない」と答えています。今こそ、企業はカルチャー醸成とテクノロジーに投資し、物理とデジタルの間に横たわる「プレゼンス格差」や「体験格差」を埋めるために動かなければなりません。
ハイブリッドコラボレーションをサポートするテクノロジー
当然ながら、ZoomやMicrosoft Teamsなどのデジタルコラボレーションツールはハイブリッドなコラボレーションを可能にする上で重要な役割を果たしています。それに加えて、スピーカー、ヘッドセット、Webカメラなどのハードウェア技術への投資も重要になるでしょう。
例えば、コラボレーションで有用なヘッドセットなどに搭載される技術にキャンセリングが挙げられます。
ノイズキャンセリングには、発言中であっても周囲の環境音(キーボード音やマウスクリック音)などのノイズを区別して低減する機能や、騒音の音波と真逆の形(逆位相)の音波を発生させ、騒音を打ち消す機能などがあります。これらによって「日ごろ意識していない音や、周りの騒音によって自分の発言が相手に聞こえない」といったトラブルを減らし、オンライン会議に参加している場所にかかわらず「プレゼンス」を維持することが可能です。
ビデオバーに搭載されている画角自動調整機能も「プレゼンス格差」や「体験格差」を埋める技術の一つです。画角自動調整機能には、複数の被写体から話者だけにズームするものや、AIが被写体を検知してズームやパンなどの画角調整を自動的に行う機能などがあります。
また、1台のカメラから複数の被写体を切り出し、オンライン会議ツール上で別々の参加者として投影させる技術も登場しています。
中~大規模の会議室で、多人数で一つのオンライン会議ツールにアクセスすると、会議室のモニターに参加者全員が映し出されます。しかし、同じオンライン会議にリモートで参加している人の画面では、会議室にいる参加者は小さく表示され、話し手一人にフォーカスされることがなく、発言内容や表情、発言の意図がわかりにくくなってしまうこともあるでしょう。
こうしたケースでも、画角自動調整機能があれば参加者一人ひとりの「プレゼンス」が向上し、快適な会議環境を実現できます。
今後、コラボレーションツールやテクノロジーは、多様な価値観をベースに働く多様な社員の働き方、考え方を守る重要な位置づけになってくるはずです。
著者プロフィール
野村宜伸(Poly日本法人 代表執行役社長)
日本市場のビジネス成長と製品シェア拡大の責任者として、日本の顧客やパートナー企業 にワールドクラスのソリューションとサービスを提供するチームを牽引。2021 年 9月にPolyへ入社。
Poly 以前は、UC 業界で 20 年以上の実績を持つ。直近では、Logicool 社で法人事業本部長を務める。それ以前は、日本マイクロソフト社で UC 事業のコンサルティングやセールス、また NTT のグループ企業でクラウド コミュニケーション サービスを提供する NTT Cloud Communications社のバイス プレジデントなどを歴任。