その結果、強いXUV放射によって加熱された上層大気では、原子輝線放射冷却が重要な冷却過程となることが明らかになったとする。

また、同放射冷却は温度が上がるほど効率的に働くため、大気の高温化が抑制されることとなるため、高い熱エネルギーを持つ大気粒子が惑星重力を振り切って脱出する大気散逸が抑制されることが確かめられたという。

  • 1~5倍の現在地球のXUVフラックスFXUVを仮定した場合に推定された温度構造

    1~5倍の現在地球のXUVフラックスFXUVを仮定した場合に推定された温度構造。実線が原子輝線冷却を考慮した場合の計算結果であり、点線が原子輝線放射冷却を考慮していない先行研究を模擬した計算結果 (出所:立教大Webサイト)

これまでの研究では、大気で吸収されたエネルギーの大部分が大気散逸に用いられると考えられてきた。それらに比べ、今回の研究で推定された大気散逸率は1万分の1程度となることが示されたという。結果として、地球大気と同量の1bar大気の散逸時間は強いXUV環境でも20億年程度と地質学的な時間スケールまで伸びうることが判明したとする。

  • 異なるXUV強度における1bar大気の散逸時間

    異なるXUV強度における1bar大気の散逸時間 (出所:立教大Webサイト)

このような強いXUV環境は初期地球や低温度星回りの系外惑星に相当し、そのような惑星でも長期的な大気の保持が可能であることが予測されると研究チームでは説明しており、今回の研究成果は、初期地球における温暖環境の保持や地球以外の温暖な環境を持つハビタブル惑星の存在可能性に対して重要な示唆となり、今後の理論的・観測的な展開が期待されるとしている。