信州大学(信大)、国立極地研究所(極地研)、名古屋大学(名大)の3者は12月1日、南極・昭和基地に設置した中性子モニターおよびミューオン計を用いて、太陽面爆発に伴う2021年11月の宇宙線減少の観測に成功したことを共同で発表した。
同成果は、信大理学部の宗像一起特任教授、極地研の片岡龍峰准教授、名大宇宙地球環境研究所の徳丸宗利教授らを中心とした、約30名の研究者が参加した国際共同研究チームによるもの。詳細は、米天体物理学専門誌「The Astrophysical Journal」に掲載された。
地球に到来する宇宙線は、太陽活動の11年周期に応じて10%ほど変動している。さらに、太陽フレアに伴うコロナ質量放出や、その磁場構造による影響を受けても変化することが知られていた。つまり、宇宙線が減少する様子を詳細に調べることで、太陽~地球間を進んでくるコロナ質量放出の大規模な磁場構造についても知ることができ、いわゆる宇宙天気予報にとっても大きなメリットを得られるということだ。
宇宙線(一次宇宙線)は地球の大気と衝突することで、ミューオン(二次宇宙線)や中性子として降り注ぐ。要は、地上で中性子やミューオンを測定することで、間接的に一次宇宙線の観測を行うことが可能だ。
ミューオンと中性子の地上での観測は、「汎世界的ミューオン観測網計画」や「宇宙線地球号計画」などのプロジェクトにより、全球規模で行われている。これらのプロジェクトは、地球全体を全天周の観測計として用いることで、宇宙の全方位から地球にやってくる宇宙線を精確に観測することが目的だ。
ミューオン計は、中性子モニターより4倍ほど高いエネルギーの宇宙線を観測できるため、両者のデータを一緒に解析することにより、宇宙線減少や「宇宙線の風」のエネルギー依存性を調べることができる。ただし、ミューオン計と中性子計で宇宙の同じ方向から飛来する一次宇宙線を観測するためには、宇宙線計を極地に設置する必要があるという。これまではそうした観測点が少なかったことから、2018年に南極・昭和基地に両観測装置が設置され、同地点・同時観測がスタートしたのである。