観測前、研究者の多くが、このような、X線のエネルギーの高低により偏光角が大きく変わることを予想していなかったという。電磁波の偏光が90度回転するというのは特徴的で、5keVより低エネルギー側と高エネルギー側でまったく異なる成分のX線放射が起きていることが示されているとした。
中性子星表面の温度を考慮すると、低エネルギー側のX線放射は中性子星表面からのものだという。そして、その一部が中性子星の磁気圏で加速された荷電粒子と散乱してエネルギーを受け取ることで、高エネルギー側のX線放射を生み出していることが考えられるとしており、これはマグネターが超強磁場を持つとした理論モデルの1つで、うまく説明することが可能だとする。
また、低エネルギー側の偏光度がこれほど低いことも、多くの研究者は予想していなかったことだという。マグネターの表面には大気が存在すると考えられており、超強磁場中の大気が効率良くX線偏光を生み出すために、偏光度は80~100%になると予想されていたとする。
今回の低エネルギーX線が約15%の偏光度を持つという観測結果は、中性子星表面の物質が超強磁場により凝縮状態になっているとした理論モデルの結果と一致しているとした。つまり、マグネター表面には大気は存在せず、超強磁場により凝集された固体地殻が宇宙空間にむき出しになっている可能性が高いことが観測から明らかになったと研究チームでは説明している。
なお、これまでにデータ解析が完了しているマグネターは4U 0142+61のみだが、IXPEプロジェクトでは今後もほかの複数のマグネターの観測を予定しているとした。サンプル数が増えることにより、中性子星の超強磁場や中性子星の表面状態についての理解が、より深まることが期待できるという。
また、IXPEによるX線偏光観測はマグネターだけでなく、ブラックホールなど、ほかの種類の天体においても実施中であり、今後1~2年で、これまでほかの方法では観測できなかった新しい宇宙の姿が見られるだろうとしている。