そして同液晶材料を有効面積1cm2の平行平板電極間に充填したところ、0.5MV/mの印加電界条件で1.3Nの静電力が得られたという。誘電率10程度の一般的な常誘電体では、同条件で約1mN程度の静電力しか得られないことから、同液晶材料では1000倍以上もの静電力を発生できることが明らかにされた。

また、強誘電材料特有の特徴である自発分極により、電圧無印加時にも電極/液晶材料界面に電荷が残存していることで、発生する静電力が印加電圧に比例することが実証された。常誘電体では発生力は印加電圧の2乗に比例することから、デバイス制御性の改善も期待できる成果とした。

さらに同液晶材料が、3Dプリンタと樹脂めっきで作製された2重らせんコイル電極に充填されたところ、9V乾電池2個を直列につないだ18V電源でも収縮動作が確認されたという。さらに200V印加時には約20%の大きな収縮率が得られ、従来のような高圧電源を必要とせずに実際にアクチュエータとして動作することも確認できたとする。

  • 強誘電ネマチック液晶材料を充填した2重らせんコイル電極型アクチュエータ

    強誘電ネマチック液晶材料を充填した2重らせんコイル電極型アクチュエータ。(上)電圧無印加時。(下)200V印加時 (出所:東工大プレスリリースPDF)

アクチュエータの軽量化や高出力化が求められる中、構造が簡単でレアメタルを必要としない静電アクチュエータの大幅な高出力化が可能になれば、電気自動車や産業機械などの多くの分野で使用されているモーターなどの電磁アクチュエータを代替できる可能性があるという。

また、開発された材料はソフトマテリアルであることから、人工筋肉のような柔軟性が求められる用途にも適用可能とした。パワースーツなどに用いれば、高齢化社会や労働人口減少といった社会問題にも貢献できる可能性があるとする。

なお、今回開発された液晶材料は粘性液体であり、実用に際しては封止技術などが必要になることから、現在、エラストマー化やゲル化を試みているとした。こうした固定化技術の発展に伴って、適用分野のより一層の拡大が見込まれるとする。

また、アクチュエータは電気エネルギーを運動エネルギーに変換する機器であるが、原理的には運動エネルギーを電気エネルギーに逆変換することも可能であることから、エネルギーハーベスティング分野への適用も検討しているとした。