具体的には、溶融含浸法によりZr、Ti、炭素(C)を主成分とする3種類のC/UHTCMCs(Z20、Z36、Z80)が合成された。これらのZrとTiの組成比(at%、Zr:Ti)はそれぞれ20:80、36:64、80:20で、異なる3つの条件(A:ノズル間距離150mm、熱流束2MW/m2:ノズル間距離100mm、熱流束4.54MW/m2、C:ノズル間距離80mm、熱流束6.68MW/m2)でアーク風洞試験が実施され、各材料の損耗評価が行われた。
その結果、複合材料中のZrの含有量が増加すると、アーク風洞試験後の材料の厚さが増加し、表面に形成される酸化物の融点も上昇することが判明したほか、複合材料の表面に生成された液相が外表面に向かって流れることで、複合材料の酸化がさらに促進されることも見出されたとする。また、Tiを多く含む炭化物に対して、Zrを多く含む炭化物の酸化が熱力学的に優先されるため、いずれの温度条件でも、複合材料の劣化が抑制されることが確認されたという。
さらに、表面分析や熱力学解析により材料表面に形成された酸化物の評価が行われたところ、材料表面に形成されたTiとZrの酸化物は主にTiO2固溶体、ZrTiO4固溶体、ZrO2固溶体であり、これらが複合材料のさらなる酸化を抑制できることが解明されたとする。特に、Z80では2000℃までZrO2固溶体と液相を維持し、2600℃以上では表面に液相のみが形成され、表面酸化物が消失することが確かめられた。
これらの結果から、Z80が超高温環境下での減少量が少なく、耐酸化性も高いため、耐熱材料に最も適していると結論付けたと研究チームでは説明している。
なお、現在、日本や米国などにおいて、ソニックブームを低減することで陸地上空でも超音速飛行が可能な旅客機の開発が進められている。マッハ5以上の超音速での飛行する機体は空力加熱の影響で高温化するため、今回の研究によるZ80のような耐熱材料が実際に使用できるようになれば、超高速旅客機の実現可能性が高くなると研究チームでは期待を述べている。