理化学研究所(理研)と東京工業大学(東工大)は11月17日、理研の重イオン加速器施設RIビームファクトリー(RIBF)を用いて、原子番号11のナトリウム(Na)の安定同位体よりも中性子が16個も過剰な同位体「39Na」(中性子数28)を生成・観測することに成功したと発表した。
同成果は、理研 仁科加速器科学研究センター 実験装置運転・維持管理室の久保敏幸研究嘱託、同・安得順協力研究員(研究当時)、同・鈴木宏技師、東工大 理学院物理学系の中村隆司教授らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、米国物理学会が刊行する機関学術誌「Physical Review Letters」に掲載された。
原子核中に中性子をどれだけ追加できるかは元素ごとに決まっており、限界以上に追加しても、すぐに中性子を放出して崩壊してしまう。たとえば、原子番号10のネオン(Ne)を例に取ると、35個以上は不可能である。このように、元素ごとに追加できる中性子数は決まっており、核図表上で各元素の中性子の最大結合数をつないだ限界線は「中性子ドリップライン」と呼ばれている。ただし、同ラインが確定しているのはNeまでで、次のNaよりも重い元素では確定されていなかったという(核図表上の同ラインは予想)。
中性子過剰核の生成は、最新技術を用いても容易ではないとされており、実際、Na元素については、20年前に中性子数26の37Naの存在が確認されて以降、進展はなかったという。これは、重い元素になればなるほど、中性子ドリップライン近傍にある同位元素の中性子数が格段に多くなるため、天然に存在する安定同位元素の重イオンビームを使った反応では生成率が減少し、生成が極めて難しくなるためだとされている。この困難を乗り越えるには、高い生成効率をもたらす実験条件の実現が不可欠だという。
そこで研究チームは今回、従来の施設・装置に比べて卓越した生成効率を持つ、RIBFが供給する大強度重イオンビームと次世代型の大口径超伝導RIビーム分離生成装置「BigRIPS」を用いて、中性子ドリップライン近傍に位置する新同位元素、中性子数28の39Naの生成と発見に挑むことにしたとする。