高出力レーザーを集光照射すると、プラズマ中には周回状の磁場が自己生成される。そして異なる2点にレーザーを照射すると、その間には逆向きの磁場を持つプラズマが生成されることがわかっている。今回は、このプラズマ中に別の低エネルギーな計測用レーザーを集光照射して、プラズマ中の電子による散乱光を異なる二方向から分光計測することにしたとする。
プラズマ中の自由電子からの散乱は「トムソン散乱」と呼ばれ、この光のスペクトルを詳細に解析することで、プラズマが持つ温度、速度、イオン価数、局所的な電流やプラズマ流の速度を求めることが可能であり、計測は、計測用レーザーの入射方向と散乱光が作るベクトル差で決まる方向に沿ったものになるという。
計測の結果、反平行磁場に垂直な方向には電子とイオンに異なる速度、つまり電流が計測され(電流シート)、時間とともにこの電流が減少して消失する様子が観測された。これは磁場がつなぎ替わったことを意味するという。
それと同時に、磁場に平行な方向には、プラズマを構成するイオンの速度分布を求めることができ、プラズマが加速・加熱されている結果を示唆するものだったとする(高温・高速度プラズマ)。
研究チームでは今回の成果を踏まえ、今後、さらに多方向での計測が可能なシステムを開発することで、磁力線を貫く任意の方向のプラズマ計測が可能になるとしているほか、このシステムを用いることで、磁力線がつなぎ替わる微小領域における粒子運動や、磁場からプラズマを構成する電子・イオンへのエネルギー分配を詳細に調べることが可能となることから、これまで未解明だった速い磁気リコネクションの駆動メカニズムやエネルギー変換過程の解明に役立つことが期待されるとしている。