手部冷却に伴う各対象者の指先皮膚温の経時変化における観察では、水を摂取した条件で回復の遅い人が赤ビーツを摂取したところ、回復が促進される様子が見られたという。ただし、赤ビーツによる皮膚温回復作用には個人差が見られ、水条件で皮膚温回復の遅い人(冷え性傾向の強い人)ほど、赤ビーツ飲料の摂取による皮膚温回復促進が顕著に示されたとする。回復1分から20分までの皮膚温回復速度は、水条件に比べて、赤ビーツ条件において回復が速まる結果が示された。また、赤ビーツ摂取により冷却後の回復区間における指先の皮膚血流の増加が促進されることも明らかとなった。

  • 手部を30分間冷水で冷却した後の指先の皮膚血流の応答

    (A)手部を30分間冷水で冷却した後の指先の皮膚血流の応答。(B)指先の皮膚温の回復速度。*水と赤ビーツ条件間で有意差(p<0.05) (出所:北大プレスリリースPDF)

一方で、冷却中の皮膚血流や皮膚温には条件間の差が見られなかったという。そのことから、強い寒冷刺激を受けているときには、赤ビーツの摂取による末梢部の血管拡張作用は生じないことが考えられたとしており、今後、日常的に生じるような軽度の寒冷環境において、赤ビーツによる血流促進作用や末梢部の冷えの緩和が見られるか検証する必要があるとの見方を示している。

  • 手部寒冷曝露に伴う各対象者の指先皮膚温の経時変化

    手部寒冷曝露に伴う各対象者の指先皮膚温の経時変化。(左)水条件。(右)赤ビーツ条件。水条件では冷却後の皮膚温回復の遅い者が見られるが、赤ビーツ条件では回復が促進される (出所:北大プレスリリースPDF)

なお、今回の研究にて、赤ビーツによる血流促進作用が末梢部の冷えの改善に資することが確かめられたことから、研究チームではオフィス環境や生活環境で冷えを感じている人の温熱的快適性向上のほか、寒冷地での屋外作業、ウインタースポーツを行った際などに、赤ビーツの食品機能性を活用できる可能性があるとしており、今後の実践研究を通じた、実用化と普及に期待が持たれるとしている。