治療もできる!日々進化する内視鏡
このように医療機関側でも検査の苦痛を和らげるような工夫を取り入れていますが、患者の身体的負担が少なくなるよう、内視鏡自体も進化しています。
今回、内視鏡のトップシェア、オリンパスの「オリンパスミュージアム」に伺い、内視鏡の進化の歴史を教えていただきました。
体の中を診察する医療機器として、世界で初めて実用化された「ガストロカメラ」いわゆる「胃カメラ」はオリンパスが1952年に発売した「GT-I」でした。
GT-Iは先端部にカメラレンズ、照明用ランプ、フィルムを組み込み、照明用ランプを点灯、消灯することでシャッターの役割を果たしたそうです。撮影後、フィルムを現像し、プロジェクタで画像を拡大し、診断を行っていました。
胃カメラはリアルタイムでの観察は不可能だったため、どの部分が撮影されたのかわかりにくいという課題がありました。そのため、リアルタイムで胃の中を見ることができる製品の開発が求められたのです。
それを可能にしたのが、グラスファイバーでした。グラスファイバーと胃カメラを一体化させることで、胃の中の映像をリアルタイムで伝送する技術が確立され、1964年に「ファイバースコープ付胃カメラ」が登場しました。これによって胃カメラ(ガストロカメラ)から置き換わって行きます。
リアルタイムで胃が観察できるようになったことは当時の医療現場にとって革命だったといいます。
その後、ビデオカメラを内視鏡に組み込んだ「ビデオスコープ(電子スコープ)」が開発され、診断の精度が向上。2002年には「ハイビジョン内視鏡システム」が誕生し、画像の精度がより向上しました。
現在では、さらなる診断精度の向上を目指し、細胞レベルの生体内観察ができる「超拡大観察」や、「狭帯域光観察(NBI)といった技術も開発されています。
また現在の内視鏡は、“みる”だけでなく、治療もできるようになっています。内視鏡の先端の穴(チャネル)に処置具と呼ばれる小さな医療機器を通し、病変を切除するといった治療が可能となっているのです。病変の状態によっては、診察から治療までを内視鏡で行うことができます。
このように、内視鏡は挿入部の小型化だけでなく、画質の向上といったさまざまな技術で病変の早期発見につながるよう日々研究されているのです。
がんは「2人に1人がなる」病といわれており、早期発見、早期治療により死亡率が下がることも知られています。
内視鏡検査はがんの早期発見に有用とされています。つらいイメージのある内視鏡検査ですが、内視鏡自体の進化や医療機関によるつらさを低減する処置などさまざまな選択肢が出てきているのです。
※田坂記念クリニック内部、オリンパスミュージアム内の写真は特別な許可を取り、撮影しています。