測定の結果、リュウグウとCIの分析値には違いが見られず、両者の組成が似ているという先行研究が支持されたとする。また、両者の鉄の同位体組成は、ほかの炭素質隕石と明らかに異なっており、鉄とチタンの同位体比をプロットすると、新しい隙間が確認されたことから、両者はほかの隕石とはまったく異なる場所で生まれたことが示唆されたと研究チームでは説明している。
微惑星を生む原始惑星系円盤は、太陽から遠いほど冷たくなるため、木星を境にしてその内側では温度が高いため揮発性元素が失われやすく、同元素に乏しい微惑星が誕生する。その一方で木星より外側は温度が低いために凍ってしまって失われずに残りやすく、同元素に富んだ微惑星が生まれる。
近年、木星は生まれた場所から一時期は火星軌道近くまで太陽に近づいた後、もう1つの巨大ガス惑星である土星に引っ張られて遠ざかり、現在の軌道に落ち着いたと考えられるようになっている。このように太陽系最大の巨大惑星が動き回ると、太陽系内は強大な重力による共鳴現象により、周囲の微惑星を次々と跳ね飛ばしたことが考えられ、大部分の微惑星は外側に飛ばされるが、一部は内側に飛ばされ、小惑星帯にまで運ばれることがあるとする。
リュウグウとCIは、最も揮発性元素に富んでいることから、木星以遠で誕生したことは間違いないと考えられるほか、木星の重力共鳴現象により大量の微惑星が移動させられたとすると、天王星・海王星領域で生まれたと考えるのが自然だと研究チームは説明する。つまり、天王星・海王星領域で生まれた微惑星の中には、まず天王星・海王星の重力共鳴により励起され、木星でさらに内側へと追いやられ、小惑星帯まではるばる移動させられたものがあると考えられるとする。
そして、リュウグウのようなCb型小惑星は、その微惑星が破壊された破片の1つであり、いずれかのCb型小惑星が壊されたその破片が地球に落下したのがCIであることが考えられるという。
今回の研究成果により、リュウグウとCIの親戚関係の結びつきがますます強くなったと研究チームでは説明しているほか、引き続き、ほかの元素の同位体組成を明らかにすることで、さらにリュウグウの正体が明らかとなることが期待されるとしている。