相対論的クーロン電場は、光に近い速度で移動する電子ビームに付随するため、それに追従するための超高速な電場計測が必要となる。そこで用いられたのが、テラヘルツ物理学で用いられて来た超高速電場計測手法「電気光学検出」だという。
今回の研究では、線形加速器で生成された高エネルギー電子ビームの周囲の電場における時空間分布を、ピコ秒の時間領域で計測。そして理論的に予想されていた、クーロン電場が電子ビーム進行方向に収縮した様子(電場の平面波)を可視化することに成功。これは「電磁ポテンシャル」のローレンツ変換の実証に対応していると研究チームでは説明する。
時間の遅れや静止質量という物理現象は、それぞれ、前者が「時間・空間」、後者が「エネルギー・運動量」のローレンツ変換から予想されたもので、今回の研究では、さらに金属境界を通過した電子ビーム周りの相対論的電場分布の発展を調べることで、平面的な電場の収縮がどのように形成されるのかも明らかにされた。
この電場分布の発展は、電子ビームの金属境界通過点を中心とする球面波として自由空間を広がるというもので、この球の半径と金属境界からの電子ビームの伝搬距離は一致するため、ビーム軸周りの電場分布に着目すると、その曲率はビームの伝搬と共に小さくなり、やがて球面は平面となるという。この実験結果は、「リエナール・ヴィーヘルト・ポテンシャル」と呼ばれる、電磁ポテンシャルのローレンツ変換とは異なる手法で導出された相対論的電場を記述する理論を実証しているという。
なお、実験で行われた特殊相対性理論の可視化はほかに類を見ず、相対性理論の最も直接的・直感的な実験結果の1つであるといえると研究チームでは説明しているほか、今回の研究で用いられた電場時空間分布の超高速計測は、理論の実証に留まらず、さらなる超高速・高エネルギー現象の研究を行う上でのプラットフォームになり得るとしている。