[N…X…N]Yは、ハロニウム(一価のハロゲン原子)、有機配位子、対アニオン(陰イオン)の組み合わせに自由度を持つ。そこで、触媒の高活性化に向けて、さまざまな組み合わせの[N…X…N]Yの合成を行うことにしたとする。そして、合成された[N…X…N]Yが含窒素化合物の脱芳香環化反応に適用されたところ、既存の触媒よりも圧倒的に少ない触媒量で有機合成反応を完結するという、非常に強力な触媒活性を示すことが見出されたという。
また、種々の対照実験や分光分析、量子化学計算が行われた。その結果、ハロニウムの形成する「三中心四電子結合」(電子不足な原子を中心原子とする電子豊富な2原子への結合)が反応駆動の鍵となっていることが明らかにされた。
今回開発された触媒は、活性中心のハロニウム、有機配位子、対アニオンを容易に変更可能だと研究チームでは説明しており、この成果は新たな分子性触媒として「非金属錯体触媒」の設計指針を提案するものであり、多彩な触媒反応の実現が期待されるとしている。そのため、今後の環境調和型触媒の設計に有用な基礎的知見を与えるとともに、医薬品や機能性材料などの有用物質を迅速に供給する分子生産技術の発展に貢献する成果につながるものと考えられるとしている。