「ServiceNow導入に正解はない」:アサヒグループジャパン
基調講演には、ServiceNowのユーザー企業としてアサヒグループジャパン(アサヒグループ)とヤマト運輸の担当者も登壇し、活用事例が紹介された。
アサヒグループでは、IT部門関連だけで200ほど、部門・会社間では数千ものITサービスを導入しており、それらの利用申請が煩雑になっていたという。
アサヒグループジャパン デジタルトランスフォーメーション統括部 マネージャーの清水博氏は、「申請から完了まで時間がかかっていたうえに、申請方法がわからない際に他の社員に聞くことも多く、従業員エクスペリエンスを損なっていた。IT部門も『従業員向けだからこれぐらいでいいだろう』といった意識でおり、申請業務を『社内向けに提供するサービス』と捉えていなかった」と振り返った。
業務ワークフローに課題を見つけた清水氏は、その後、「従業員をカスタマーとして捉え、従業員エクスペリエンスを最大化する」ことをミッションに掲げ、「ミッションの達成に必要な情報にすべての従業員が自力で到達できる」ことを目標にワークフロープラットフォームの構築に新たに着手し、2020年にNow Platformを導入した。
同社では、Boxで社外とのデータ連携用のフォルダを作成するのに申請が必要で、完了までに2週間以上かかっていたが、新たなワークフロープラットフォーム構築により、申請から完了までのリードタイムを数時間まで短縮できるようになったという。現在は、他のサービスの申請業務の効率化や サイロ化した他のITサービス・システムを連携するためにNow Platformを活用している。
「Now Platformは単体で導入するものでなく、さまざまなサービスと連携して利用するものだ。そのため、製品導入はにあたって唯一の正解はないと考える。ジグソーパズルを組み立てるというより、レゴブロックで自分だけの納得感のある姿を組み立てるイメージで、企業がデジタル化で達成したいことに合わせて活用するものだと捉えている」と清水氏は結んだ。
データ活用のために社内向けサービス構築:ヤマト運輸
一方、データドリブン経営を目指すヤマト運輸では、データサイエンティストのデータ活用を支援するための基盤となる「データ・コンシェルジュサービス」の構築にNow Platformを活用している。
同社には約5000万人の「クロネコメンバーズ」会員、21万6000人の従業員、5万4000台の車両、3400の営業所など、さまざまなデータの発生ポイントがある。また2022年3月期には22億7562万個と、年間で膨大な数の荷物をあつかっており、それらに関連した多様なデータを併せて活用して、荷物の量の予測や人員・車両の適正配置などを目指している。
しかし、ヤマト運輸 執行役員(DX推進担当)の中林紀彦氏は、「散らばっているデータを探して、クレンジングして、分析できる段階に持っていくまでにデータサイエンティストのワークロードの9割を割いてしまっており、効率的にデータを収集してあつかえるようにすることが課題だった」と明かした。
従来はチャットツールを用いて、データサイエンティストとデータコンシェルジュが、データの所在や内容についてのやりとりを行っていた。だが、データ収集のワークフロー全体が可視化されておらず、データコンシェルジュはデータの不明点や調達に関する相談を誰にすればよいかわからず、データサイエンティストもデータの所在を把握できていないため、一定のスピード・品質でのデータ収集が行えなかったそうだ。
Now Platformのワークフロー機能を利用して、データの所在やデータ調達・分析などの対応状況をリアルタイムに共有するようにしたことで、データサイエンティストとデータ・コンシェルジュはデータにまつわる依頼・相談を一元的に行えるようになったという。
これにより、あるデータの提供には1カ月かかっていたところ、2週間で対応できるようになり、データ・コンシェルジュが1カ月間に対応できるデータサイエンティストからの要望も1.5倍に増加したとのことだ。
同社はこれまで、数百から数千のデータセットを作成しており、現在はダッシュボードでそれらを管理している。また、ローコード・ノーコードツールを用いて、データ・コンシェルジュサービスの簡単な改良は内製化しているそうだ。今後は、同サービスをビジネス部門でも利用できるように整備していく方針だという。