理化学研究所(理研)は10月19日、理研の重イオン加速器施設「RIビームファクトリー」(RIBF)を利用し、原子番号47の銀から原子番号50のスズまでの非常に中性子過剰な20種の放射性同位元素(RI)の遅発中性子放出確率の測定に成功したことを発表した。

同成果は、理研 仁科加速器科学研究センター RI物理研究室のヴィ・ホー・ホアン特別研究員、同・西村俊二先任研究員、同・ジュセッペ・ロルッソ客員研究員(研究当時)、同・櫻井博儀室長らのBRIKEN(ビーリケン)プロジェクトを中心とした、国内外約30の大学・研究機関60名以上の研究者が参加するBRIKEN国際共同研究グループによるもの。詳細は、米国物理学会が刊行する機関学術誌「Physical Review Letters」に掲載された。

これまで、宇宙初期の同位体分析は難しいとされてきたが、詳細な解析により、原子番号56バリウムの同位体の135Ba(中性子数79)、137Ba(同81)、138Ba(同82)の同位体比が報告された。宇宙初期の「速い中性子捕獲過程(r過程)」成分と、太陽系のr過程成分におけるBaの同位体比を比較することが、r過程の起源を明らかにするために望まれていたというが、太陽系には「遅い中性子捕獲過程(s過程)」成分も含まれており、特に138Baの約95%はs過程が起源であるため、太陽系におけるr過程を起源とするBa同位体比は不明であり、太陽系に含まれるr過程を起源とするBaの同位体比を見積もるためには、質量数135近傍の中性子過剰なRIの半減期に加え、「遅発中性子」の放出確率の高精度なデータが必要だったという。

そこで今回は、理研のRI寿命測定装置「WAS3ABi」と、欧州の大球形ゲルマニウム半導体検出器「EURICA」を組み合わせた高性能核分光測定の「EURICAプロジェクト」で収集した大量の半減期データに加え、Baの同位体比に大きな影響を与える遅発中性子放出確率の精密なデータが収集された。