この2台の連携実現には、MAXIデータの新星発見ソフトウェアをISS上のコンピュータにインストールし、突発現象の情報を直接NICERに伝えて自動で追観測する仕組みが必要であったという。これまでの追観測は、MAXIチームからスイフト衛星の運用チームへメールなどで依頼されており、人手を介していたため、どうしても数時間のタイムラグが発生していた。しかし、MAXI-NICERの直接連携なら人手を一切介さないため、突発現象の発生からおよそ10分後までには詳細な観測が可能になると見積もられた(最終目標は2分後)。

  • a,MAXIで確認されたMUSST天体の例

    MAXIで確認されたMUSST天体の例。MAXIでは上段のように非常に強く検出されているが、約半日後のスウィフト衛星による追観測では、下段のようにまったく検出されていない。対応天体不明のため、未同定天体となっている (c)理化学研究所 (出所:JAXA Webサイト)

2020年11月からNASAジョンソン宇宙センターのISSチームとJAXAの「きぼう」船外利用担当による準備が本格化し、2022年5月26日に稼働。その後13日間の動作検証と2か月半の試験運用が行われ、8月10日から本格運用がスタート。そして9月13日には、MAXIがペガスス座のM15球状星団からのX線バーストを捉え、その5分30秒後からNICERが自動観測を行うことに成功したとする。

  • MAXIによるM15のX線画像(X線バースト検出前と検出時)

    (左)MAXIによるM15のX線画像(X線バースト検出前と検出時)。(c) 理化学研究所(右)X線バーストの発見から観測までの流れ。MAXIのX線強度(上段)、OHMANのトリガー時刻(0秒)からのNICERの動き(中段)が時系列で示された図。330秒後にNICERがM15を視野に捉えたが、すでにX線バーストは終わっていた(下段)。430counts/secはM15の通常のX線強度で、MAXIでは0.07counts/secに対応 (c)理化学研究所 (出所:JAXA Webサイト)

しかし今回は、非常に短いX線バーストだったため、NICERが追観測を行った時点ですでに消えていたという。とはいえ、短時間での自動連携観測の実証に成功し、今後の連携観測に大きく前進したとする。今後は、2022年春から増加中の太陽フレアに対するパラメータ調整を行うなど、さらに精度を高める計画を掲げている。

なお、未検出ではあるが、MUSST天体には宇宙最初の「ファーストスター」による太古の超大型超新星爆発(未発見のファーストスターガンマ線バースト)が含まれている可能性があると研究チームでは説明するほか、中性子星表面で発生する暴走的な核融合反応による、X線バーストの中でも特異な長い継続時間を持つ「スーパーバースト」や、太陽フレアの数千から数億倍の規模の恒星フレアなど、これまで発生初期段階からの詳細な観測が難しかった突発現象もそれが可能になることが強く期待できるとしている。