理化学研究所(理研)、中央大学、日本大学(日大)、青山学院大学(青学)、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の5者は10月17日、国際宇宙ステーション(ISS)に設置されている全天X線監視装置「MAXI」と、中性子星内部組成探査機(X線望遠鏡)「NICER」の連携による、X線突発天体の即時観測計画「OHMAN」(On-orbit Hookup of MAXI and NICER:オーマン)を2022年8月10日から本格稼働し、9月13日に連携観測に成功したことを発表した。
同成果は、理研 開拓研究本部 玉川高エネルギー宇宙物理研究室の三原建弘専任研究員、中央大 理工学部の岩切渉助教、日大 理工学部の根來均教授、青学 理工学部の芹野素子助教、JAXA 宇宙科学研究所の中平聡志主任研究開発員のほか、東京工業大学、京都大学、宮崎大学、愛媛大学、NASAの研究者らも参加した国際共同研究チームによるもの。
MAXIはJAXAと理研が共同開発し、ISS「きぼう」日本実験棟の船外実験プラットフォームに備え付けられている装置だ。2009年8月に観測を開始し、これまで34個の新天体を発見しており、その中には正体不明の天体も含まれているという。MAXIが行う約90分に1回のスキャンで捉えることができても、数時間後にスイフト衛星が追観測を実施した際にはすでに消滅しているような、「急速減光天体」という一群で、研究チームでは、これらを「MAXI未同定短時間軟X線突発天体(MUSST天体)」と呼んでいる。
近年、MUSST天体の1つは、ブラックホールもしくは中性子星が恒星の核に入り込むことで爆発を引き起こすという、未観測の超新星爆発である可能性が示唆されている。つまり、MUSST天体は人類がまだ見たことのないまったく新しい天文現象の可能性があるという。
ただし詳細に調べるには、地上の大型望遠鏡や宇宙望遠鏡での観測が必要となるものの、MAXIは視野は広いが、正確な位置決定を苦手としていることから、MUSST天体が消滅する前に追観測を実施し、天体の位置を絞り込む必要があったという。
そこで着目されたのが、NASAゴダード宇宙飛行センターで開発され、ISSのトラス部に搭載されて2017年7月から観測を行っている、もう1つのX線天文装置のNICERで、同装置は追尾型X線望遠鏡のため、視野は狭いが非常に深い観測を行えるという特徴がある。
MAXIとNICERは地上からの制御でそれぞれ独立に稼働しているが、もしこの2台をISS上で直接連携させられれば、「X線帯で突発現象を発見し、X線帯で即座に詳細な追観測をする」という、お互いの短所を補完し合える国際連携天文台が実現する。そこで、日本のMAXIチームとアメリカのNICERチームによる国際共同のOHMAN計画が立ち上げられた。