シャープは10月13日、米コロンビア大学の研究チームの成果として、浮遊する新型コロナウイルスの変異株(オミクロン株)の減少効果、ならびに喘息症状緩和につながる可能性を確認したことを発表した。

これらの成果は、コロンビア大学医学部 アービング医療センターの辻守哉 教授ならびに同 森宗昌 准教授らによるもの。

  • 今回の研究を行ったコロンビア大学医学部 アービング医療センターの辻守哉 教授ならびに森宗昌 准教授

    今回の研究を行ったコロンビア大学医学部 アービング医療センターの辻守哉 教授ならびに森宗昌 准教授 (資料提供:シャープ)

より実環境に近い状況における新型コロナ オミクロン株への効果を確認

今回、辻教授が行ったのが新型コロナ オミクロン株(BA.1株)に対するプラズマクラスターの効果検証。具体的には、安全キャビネット内に収まる最大規模のボックスサイズとなる102L(80cm×32cm×40cm)の試験装置を用いて、遠心分離装置で濃縮したオミクロン株高濃度ウイルス液を同装置内に噴霧し、プラズマクラスターイオンを混ぜた風を内部に送り、ボックス内部の浮遊ウイルスを回収し、TCID50法によりウイルスの感染価を計測するという手法を採用した。

また、ここで放出されたプラズマクラスターイオンの数は、自動車に搭載されるプラズマクラスターイオン機器(イオン濃度2万5000個/cm3)で、研究用の高濃度イオン発生機を用いたわけではないという。

  • 新型コロナオミクロン株に対する検証試験のイメージ

    新型コロナオミクロン株に対する検証試験のイメージ (資料提供:シャープ)

計測の結果、プラズマクラスターなしの場合、ウイルス感染価は8.63×103であったのに対し、プラズマクラスターありの場合、15分の照射で6.15×101へと減少しており、99.3%の減少率を確認したとする。また、回収したウイルスを細胞に接種させ、数日間培養させた試験でも、プラズマクラスターなしの場合では、ウイルスの感染により多くの細胞が死滅し、残骸が確認された一方で、プラズマクラスターありの場合、ウイルスの感染性は除去され、正常な細胞の状態がほぼ保たれていることが確認されたという。

  • 新型コロナオミクロン株に対する減少効果

    新型コロナオミクロン株に対する減少効果 (資料提供:シャープ)

今回、オミクロン株が減少したメカニズムについてシャープでは、詳細な調査をしていないので断言できないが、過去の新型コロナ向け研究の検証からすれば、プラズマクラスターイオンがタンパク質表面に着くときの酸化力が効果を発揮したものと考えられることから、今後、さらなる変異が生じて、スパイクタンパク質の形状が変化したとしても、効果を発揮できる可能性があるとしている。

また、新型コロナウイルスを室内に飛ばして効果検証をすることは困難である現状を踏まえながら、今回の研究では送風を行い、市販レベルのイオン濃度で効果検証が行えたことについて、広さや方法などを含め、実空間での将来適用の可能性が出てきたとの見方を示す。

  • 今回の研究を踏まえた今後への期待

    今回の研究を踏まえた今後への期待 (資料提供:シャープ)