このような特殊なウォルフ・ライエ星だが、実は太陽系の誕生に一役を担った可能性もあるという。同星からの恒星風が吹きつけることで吹き飛ばされた物質が周辺に集まり、新しい恒星が形成されるのに十分な密度となる可能性があるからだという。太陽系はそのようなシナリオで形成された、という証拠もいくつか見つかっている。

  • WR140のウォルフ・ライエ星とO型大質量星の連星

    WR140のウォルフ・ライエ星とO型大質量星の連星。左上の太陽と比較するとその巨大さがわかる (C)NASA/JPL-Caltech (出所:ISAS Webサイト)

こうした特徴から、天文学者は天の川銀河内にウォルフ・ライエ星は数千個あると推測しているが、実際にはまだ600個ほどしか発見されていない。その矛盾が問題視されているという。

さらに今回の研究では、MIRIの分光データにより、ウォルフ・ライエ星が、宇宙における炭素の重要な供給源であるという証拠が、これまででもっとも明確な形で示されているとした。ダストとガスから惑星が形成される際に、ダスト内の炭素が豊富な分子が惑星に持ち込まれるが、ダストのシェルが保存されているということは、そのダストが恒星間の過酷な環境で生き残り、将来生まれる恒星や惑星に材料を提供し続けるということを意味しているとする。

またWR140のような短命のウォルフ・ライエ星は、初期宇宙にも存在していた可能性が高く、今回の発見は、宇宙の物質の進化を解明するのに大きな助けになる可能性があるという。JWSTの性能であれば、ウォルフ・ライエ星が銀河の中でどのように星間物質を形成し、新たな星の形成につながっていったのかについて、さらに多くのことを学べる可能性があるとしている。