合金組成の調整と結晶方位の制御を行った<100>方位を有する銅系合金のバルク単結晶材に対し、室温での一軸引張試験が実施されたところ、4.3%を超える弾性歪みが確認されたという。従来の金属材料の大半は1%以下であり、これまで開発されてきた金属の中では2%以上の大きな弾性歪みを持つチタン系ゴムメタルを超す値が示されたという。
また、銅系合金の<100>単結晶材には、これまでの金属材料の常識と考えられてきた「フックの法則」が成り立たず、非線形な弾性変形挙動が確認されたという。引張応力が0から600MPaまで増えると、ヤング率(接線弾性率)は最初の約24GPaから約7.5GPaへと小さくなり、試料が塑性変形せずに柔らかくなることが確認されたという。
さらに、その大きな弾性変形の挙動を理解するため、引張試験中のその場中性子回折による構造解析が行われたところ、銅系合金における大きな弾性歪みは、結晶中の原子配列が規則化した体心立方構造を保ったまま、結晶の格子が伸縮することに由来することが判明。これは従来の形状記憶合金に見られる結晶相の変化に関与した「擬弾性変形」とは異なり、真の弾性変形といえるとしており、これにより、繰り返し変形による特性劣化が少ない性質が得られると研究チームでは説明している。
研究チームでは、今回発見された銅系合金について、従来のバルク金属材料に比較して弾性歪み、ヤング率の点で比類ない特性を有しており、高性能バネ、コネクタ、シール材や精密機械、医療機器などへの応用が期待されるとするほか、その大きな弾性変形を活かすことで、弾性歪みエンジニアリングによる従来の設計枠を超えた、たとえば歪みを媒介としたセンサなど、新しい製品の創出も期待できるとしており、今後、東北大にて、実用化へ向けた疲労特性の評価を実施するほか、企業と連携して量産技術の確立を進めていくとしている。また、バネ材、センサ材など、さまざまな用途への展開も図っていくともしている。