そして2022年1月14日、雷雲に付随した2回のガンマ線イベントの検出に成功。1回目は午前6時13分頃から約4分間、2回目は午前11時51分頃から約4分間にわたり、ガンマ線強度が増大。両イベントともに、典型的な雷雲ガンマ線であることが確認された。

今回得られたガンマ線画像の有意性(信頼性)についての綿密な検証が行われ、偶然(雷雲と関係なく)観測される確率はどちらも0.01%未満だという。さらに、描出したガンマ線画像の再現実験でも、観測時と同様な画像が得られ、今回の観測結果を強くサポートすることになったとする。

  • 2回のガンマ線発生イベント初期におけるレーダーマップ

    (上)2回のガンマ線発生イベント初期におけるレーダーマップ。左は1回目、右2回目時点の雨雲の分布。矢印はコンプトンカメラの視野中心の方向。扇形はコンプトンカメラで一度に観測可能な視野。(下)コンプトンカメラによって捉えられた、ガンマ線画像の時間変化。1回目のイベントのピーク付近で、明るいスポット(領域1・2)が現れ、また消えていく様子がわかる (出所:JSTプレスリリースPDF)

雷は身近でダイナミックな自然現象の1つでありながら、科学的にはまだ多くの謎が残されている。さらに、ゲリラ豪雨のような異常気象や落雷に伴う停電を含め、常に社会的な関心を集めるホットな現象といえる。最近では、理研を中心に一般市民参加型のシチズンサイエンス「雷雲プロジェクト:ふしぎな雷雲ガンモを探せ!」も開始され、現在金沢市内に50か所を超える多地点マッピング拠点が展開されており、今回の研究もその流れを汲む成果だという。

日本海側では冬季に雷が多いとはいえ、太平洋側の夏の雷と比べると発生回数が少なく、1つの観測点で1シーズンに1~2回しか期待できないという。研究を加速するためには、より多くのイベントを検出するには装置の数を増やすことが有効となるため、今後、研究チームではコンプトンカメラを毎年3個程度ずつ製作し、金沢市内を含むさらに多くの拠点展開を目指すとしている。

また、今回観測に用いたコンプトンカメラは、150keV以下のガンマ線に感度がないという。より低エネルギーのガンマ線を効率良く捉えるため、新発想の「広帯域ハイブリッド・コンプトンカメラ」の導入も検討しているとしている。一般に、ガンマ線の到来数は低エネルギーほどイベント数が多いため、この新型カメラであれば、より多数のイベントの検出が容易になることが見込まれると研究チームでは説明している。