産業技術総合研究所(産総研)は9月28日、リチウムイオン電池(LIB)の充電を行える多層型有機熱電素子を開発したことを発表した。
同成果は、産総研 ナノ材料研究部門 接着界面グループの向田雅一主任研究員、同・衛慶碩主任研究員らの研究チームによるもの。
現在、多くの機器の電源としてエネルギー容量の大きいLIBが使用されているものの、定期的な充電や交換が必須となっている。しかし、機器が設置された場所によっては、電池交換が容易ではない場合もある。
そうした中で期待されているのが、機器周囲の熱源から直接発電が可能な熱電素子だという。しかし、同素子を新たな電源として使うためには、機器本体のデザインや部品構成などを改める必要があり、それは機器の製造ラインの作り直しも意味する。それに対し、もし熱電素子をLIBの充電器として利用できれば、そうした問題もなくなることが期待されているという。
また、コンセントからの充電だと、機器によっては電源電圧(100V)から数Vまで電圧を低下させる必要があり、余ったエネルギーは熱として捨てられてしまう。一方、熱電素子を用いる場合は、今まで未使用の熱を用いて充電できるため、エネルギーの有効活用という点でも期待されている。
こうした背景のもと、これまで「ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸」(PEDOT/PSS)を主材として、有機熱電素子を開発してきたのが研究チームだという。これまでの研究から、100℃の熱源では40μW/cm2の出力密度を達成しているという。
そうした知見を踏まえ、今回の研究では、市販LIB(定格電圧:2.4V)を充電できる有機熱電素子の開発に挑んだという。