キラルな金ナノ微粒子には右巻きと左巻きの構造のものがあり、その両方を用いて実験が行われたところ、キラルな金ナノ微粒子を右回りと左回りの円偏光で光トラッピングし、キラリティに由来する左右の円偏光による光勾配力の差を観測することに成功。右巻きの微粒子と左巻きの微粒子では、実際に光勾配力が異なることが確認されたという。また、用いる光の波長に対する依存性から、そのメカニズムについて、これまで知られていない効果があることが見出されたという。

  • キラルな物質(乳酸)の円偏光に対する応答(光学活性)のイメージ

    (左)キラルな物質(乳酸)の円偏光に対する応答(光学活性)のイメージ。D体の乳酸の右円偏光に対する応答とL体の乳酸の左円偏光に対する応答は、等価な応答になる。L体と右円偏光、D体と左円偏光の応答も同様に等価になる。(右)キラルな金微粒子の走査型電子顕微鏡像。上が右巻きで、下)が左巻き (出所:分子研Webサイト)

なお研究チームでは、今回の研究結果において、キラルな金ナノ微粒子の運動に与える円偏光依存の光勾配力の特徴が解明されたことで、キラルな物質の光の力による分離の可能性が示されたとする。今後は、ナノ構造体上に発生する局所的な強い光で光トラッピングを行ったり、ほかのメカニズムによる光の力も利用したりすることで、キラルな物質の分離の応用展開が期待されるとしている。

  • キラルな金微粒子の光トラッピングのイメージ

    キラルな金微粒子の光トラッピングのイメージ。キラルな金微粒子には、右円偏光と左円偏光で、異なる光勾配力が働く (出所:分子研Webサイト)