カルボキシ化PAAは、純水中やナトリウムイオンなどのアルカリ金属イオンの存在下では温度応答性を示さないが、カルシウムイオンなどのアルカリ土類金属イオンが存在する水中では、LCST型相転移を示す。イオンという第三成分の有無で、LCST型の温度応答性の発現制御が可能な高分子は、研究チームで調べた限りでは世界初の報告例だという。

  • 今回開発された、カルシウムイオン存在下で温度応答性を示す高分子

    今回開発された、カルシウムイオン存在下で温度応答性を示す高分子 (出所:大阪公大プレスリリースPDF)

これまで、温度応答性高分子の応答温度を制御する方法として、ポリマー側鎖構造の親水性の制御が広く用いられてきた。今回のカルボキシ化PAAも、従来と同様に側鎖構造の親水性を変更することで、応答温度を変化させることに成功したとする。

また、同高分子の特徴として、存在するアルカリ土類金属イオン種を変更することで、同一のポリマーでありながら応答温度が変化することも発見された。しかも、2種のアルカリ土類金属イオンの混合比を変えることで、ほぼ直線的に応答温度を制御できることも確認されたという。これまで、ポリマーの構造を制御することで応答温度をコントロールする研究は広く行われてきたが、イオンの種類や混合比を変更することで簡単に応答温度を制御できる点は、カルボキシ化PAAの非常にユニークな特性としている。

なお、カルボキシ化PAAは、比較的安全なイオンの有無により、温度応答性発現のON-OFFをスイッチングできるだけでなく、イオンの種類や混合比による応答温度の制御も可能なことから、今後は、細胞培養基材へのコーティングやドラッグデリバリーシステム用ナノ集合体へと発展させることで、バイオマテリアル応用へ展開することを検討していると研究チームでは説明しているほか、特定のイオンに応答して温度応答性を示すことから、イオンセンシングに用いる分析試薬としての応用展開も見込めるとしている。