大阪公立大学(大阪公大)は9月20日、安価で豊富な資源量の元素を用いて、高い容量と可逆性を持つ全固体ナトリウム電池の正極材料「Na2FeS2」の開発に成功したと発表した。
同成果は、大阪公大大学院 工学研究科の奈須滉大学院生(大阪府立大学 大学院生)、同・作田敦准教授、大阪公大の辰巳砂昌弘学長、同・大学院 工学研究科の林晃敏教授を中心に、東京大学、早稲田大学の研究者も参加した共同研究チームによるもの。詳細は、ナノ/マイクロスケールのサイエンスに関する学際的な分野を扱う学術誌「Small」に掲載された。
リチウムイオン電池(LIB)の需要は近年、急拡大を続けており、リチウムやコバルトなど必要とするレアメタルの需要が、2030年頃には供給を上回ってしまうと懸念されている。そのため、リチウムのような希少性の高い元素を利用するのではなく、資源量の豊富な元素の利用が重視されるようになってきており、日本においても亜鉛やマグネシウムなど、資源量豊富な元素を用いた、いくつかのタイプのバッテリーについて研究開発が進められており、ナトリウムイオン電池もその1つとなっている。
そのナトリウムイオン電池の研究において、世界最高クラスの性能のナトリウムイオン伝導性固体電解質を開発するなど、力を入れて取り組んでいるのが大阪公大である。そうした中、研究チームは今回、全固体ナトリウム電池の本質的な低コスト化に向けて、鉄を用いた正極材料の開発を行うことにしたという。
今回の研究では、安価で豊富な元素で構成される鉄系硫化物が着目され、ナトリウム(Na)、鉄(Fe)、硫黄(S)のみを用いた正極活物Na2FeS2が開発された。また、Na2FeS2を正極活物質として用いて試作した全固体ナトリウム電池は、Na2FeS2重量あたり約320mAhg-1の高容量を示し、理論容量に相当することが確認されたとする。