具体的には、熱処理を行うと、高温時にSi基板の表面とペーストが溶け、Al-Ge-Siを成分とする溶液が形成される。温度が降下する過程において、過飽和状態が形成されると、SiGe膜がSi基板上にエピタキシャル成長する。表面に残留したペーストを化学処理によって除去することで、Si基板上に成長したSiGe半導体の膜を得ることができるという仕組みだという。
実際に、合金ペーストをSi基板上に印刷した試料を900℃で5分間の熱処理を行った後、表面の残留ペーストを化学処理により除去した後の試料は、Si基板上に厚さが10μmを超える膜が連続的に形成されたという。また、AlとGeを合金化することなく別々に混ぜて作製した混合ペーストでは、昇温時のペーストの溶融が不均一に起こることによって、残留ペーストの化学処理が困難という課題があったというが、合金ペーストにより、そのような課題も解決されたとしている。
また、エックス線回折装置を用いて、試料の逆格子空間マップ測定を行ったところ、Si基板上の膜が歪むことなくエピタキシャル成長した場合にX線が観測される予想直線上に連続的にX線が観測されたことから、結晶の格子定数が連続的に変化していることが予測されると研究チームでは説明しているほか、別の測定と合わせることで、Si基板から表面に向かい、少しずつGeの量が増えていることも確認されたとしており、こうした組成傾斜は、結晶中の原子の乱れを少なくする効果があるとしている。さらに、最表面でのGe組成は約90%となっており、化合物半導体のエピタキシャル成長用基板としてGeと同等の機能を持つことが予測されるとする。
なお、SiやAlは地球上に豊富に存在していること、ならびに今回の研究によって開発された、印刷と熱処理からなる製造技術は高価な真空装置が必要でないことから、製造設備も低コスト化が可能だと研究チームでは説明しており、今後は、大面積化や化合物半導体薄膜成長などへの展開が必要としながらも、今回の研究成果について、超高効率多接合太陽電池の低コスト化に貢献できる可能性が示されたとしている。