今回の研究では、動物モデルとして生後90日齢の小型のミニブタに2%のPHBを混餌で与え、糞便中の酢酸、プロピオン酸、酪酸および乳酸の濃度が測定された。その結果、酢酸、プロピオン酸および酪酸の濃度が有意に増加していること、pHが有意に低下していることが確認されたとする。また、ラットにおいても、PHBはロゼブリア属などの酪酸菌が有意に増加することが報告されているという。
健康長寿の高齢者における腸内細菌叢の遺伝子解析調査において、酪酸菌が有意に多いことが報告されているという。またげっ歯類の動物において、酪酸優位な腸内環境が大腸がんを抑制することが報告されており、こうしたこれまでの報告や今回の研究成果から、PHBの持続的な投与が、ペットや家畜など動物の理想的な腸内環境の維持に寄与する可能性があると研究チームでは説明するほか、PHBは、ヒトの消化管の健康を保つ有効な手段としても応用が期待されるという。
なお、従来のプレバイオティクスは、腸内細菌の栄養として食物繊維などが用いられてきたのに対し、「ケトバイオティクス」ではケトン体が腸内細菌の直接エネルギー基質として働くため、食物繊維などよりもはるかに効率のいい栄養素として、より短時間で腸内細菌叢を変化させる可能性があるとする。
また、現在までケトン体の生理学がほ乳類に限られてきたことから、今回の成果は原核生物への明確な生理作用であるという点において、これまでとは一線を画す、ケトン体研究の新たな地平を開くものであると考えられると研究チームではしており、ケトン供与体の社会実相への第一歩となることが期待されるとしている。