具体的には、研究として12名の健常男性を対象に、表面筋電図を用いて運動課題中の筋活動量の分析を実施。運動課題は、通常の姿勢を保持した等尺性スクワットと、ループ状にしたワイヤーを介してバーベルに取り付けた両端のハンマーを同じタイミングで前後方向に揺らすハンマロビクス運動とされた。

各運動課題中の姿勢はゴニオメータにより、試技ごとに膝関節が90度で一定となるように規定。各運動課題中の下肢・体幹筋群の筋電位データから筋活動量が算出され、運動課題間の比較が行われた。この際の下肢・体幹筋群の種類と動き、そして一部に関してはその作用は以下の通りだ。

  • 母趾外転筋:母趾屈曲、外転、足部のアーチ形成
  • 前脛骨筋:足関節背屈
  • 後脛骨筋:足関節底屈、内反
  • 長腓骨筋:足関節外反、底屈
  • 大腿直筋:膝関節伸展、股関節屈曲
  • 大腿二頭筋:膝関節屈曲、股関節伸展
  • 半腱様筋:膝関節屈曲、股関節伸展
  • 大殿筋:股関節伸展、外旋、内外転
  • 多裂筋:体幹伸展、側屈、回旋、体幹の安定性に関与
  • 内腹斜筋:体幹屈曲、回旋

その結果、等尺性スクワット運動に比べてハンマロビクス運動では、下肢筋群において母趾外転筋、前脛骨筋、後脛骨筋、長腓骨筋、半腱様筋の活動が、体幹筋群において多裂筋の活動が有意に高まることが判明したとする。

ハンマロビクス運動では、前後の振り子運動を加えることで、足の指や足関節を意識的に動かさなくても足部内在筋や外在筋を含め、足部の筋群が働いていたことは新しい発見であり、関節を動かすことに制限のある人にも応用ができると考えられると研究チームでは説明しているほか、腰痛発症予防には多裂筋の活動を高めることが重要であるという報告があるが、ハンマロビクス運動ではこの多裂筋の活動を高めることも確認されたことから、この運動は腰痛発症予防のためのプログラムとして活用できる可能性があるともしている。

なお、今回のハンマロビクス運動ではバーベルや鉄球を用いていることから適応対象者は限られると考えられることから研究チームでは、今後はペットボトルなど、より軽量な負荷で代用した場合の下肢体幹筋群の活動を分析することで、中高齢者の健康増進やケガを有している人方のリハビリテーションに応用できる可能性もあるとしている。