MuSCATチームは、ハワイ・マウイ島のハレアカラ観測所に設置された4色同時撮像カメラ「MuSCAT3」による多色トランジット観測と、すばる望遠鏡に搭載された近赤外視線速度測定装置「IRD」を用いたインテンシブ観測による視線速度の観測を実施。2021年10月までにTOI-4306.01が惑星であることを確認したという。

一方、SPECULOOSチームは2021年8月からTOI-4306.01のトランジット時刻以外も含めてLP890-9の継続的な観測を行い、2021年10月と11月にTOI-4306.01とは別の周期の減光を発見。同チームのデータではその新たな系外惑星候補の公転周期を1つに絞り込むことができなかったが、MuSCATチームが協力し、MuSCAT3での追観測を実施。同候補が本物の惑星であり、公転周期が約8.46日であることが確認された。

発見された2つのトランジット惑星LP890-9bと同cは、半径がそれぞれ地球(約6357km)の1.32倍(約8391km)と1.37倍(約8709km)であることが確認された。この半径の惑星では、理論的に水素大気を持つ小さなガス惑星である可能性が極めて低い(水素大気を持っていても重力が小さいので維持できない)ので、地球よりやや大きな岩石惑星であるスーパーアースであることが考えられるという。

また外側のLP890-9cは、ちょうどLP890-9のハビタブルゾーンに入っていることも確認された。このように短周期の惑星がハビタブルゾーンに入るのは、LP890-9は表面温度が約2600℃(太陽は約5500℃)しかなく、太陽の15%ほどの半径しか持たない小さな恒星であるためだという。

  • 太陽より温度の低い恒星であるLP890-9と、系外惑星がトランジットするイメージ

    太陽より温度の低い恒星であるLP890-9と、系外惑星がトランジットするイメージ。MuSCAT3により複数の波長帯で同時にトランジットが捉えられたことから、恒星の表面現象ではなく、系外惑星であることが確認された (C)アストロバイオロジーセンター/MuSCATチーム (出所:NAOJ すばる望遠鏡Webサイト)

LP890-9cはまだ発見されたばかりで、そこがどんな世界で、はたして生命が存在するのかどうかも現時点では不明だが、トランジット惑星であるため、主星の光を用いたトランジット観測で大気組成や雲の有無など大気の性質を詳しく調べることが可能だという。大気の性質は、地表に液体の水が安定的に存在できるかどうかに大きく影響するので、非常に重要である。

なお、たとえ将来の観測でこの惑星には生命が存在しそうにないとわかっても、ハビタブルゾーンにある岩石惑星がどのような大気を持つのかを研究することは、地球が宇宙の中でどのような存在なのかを位置付ける上で重要となると研究チームでは説明している。