立教大学は9月5日、カーリング競技で用いられるストーンが「反時計回りに回転させると、進行方向に向かって左側に曲がっていくのはなぜか」という、98年間にわたって科学者の間で真っ向から対立する仮説に基づく議論が繰り広げられてきた“世紀の謎”を、精密な画像解析によって実験的に解決することに成功したと発表した。
同成果は、立教大 理学部の村田次郎教授によるもの。詳細は、英オンライン総合学術誌「Scientific Reports」に掲載された。
カーリングにおいて、反時計回りの回転がかけられて投じられたストーンは、常識的な感覚からすると、反作用として氷との摩擦力を受けて右側に曲がっていくように思われるが、現実には左側に曲がっていくことが知られている。この謎は1924年に学術誌に取り上げられ、以来、さまざまな仮説が乱立してきたが、これまで謎のままだった。
物理学としては高校から大学1年生で学ぶ初歩的な力学だけで済むはずだが、これほど長い間詳細がわからなかったのは、仮説を判定するに足る十分に精密な実験データを技術的に得られなかったことに理由があるという。
そこで今回、村田教授が4次元以上の高次元空間を探す目的のため、マイクロメートルスケールで万有引力の法則を検証する実験用に開発した「画像処理型変位計」を用いて、ストーンの振る舞いを詳細に計測することにしたという。
具体的には三脚に設置したデジタルカメラの前で、村田教授が1人でストーンを投じて撮影した122回の運動が、マイクロメートルスケールの精密なデータとして取得された。その結果、ストーンの下面が、氷と歯車のようにかみ合って旋廻する現象などが観測されたという。また速さが遅くなるほど、動摩擦係数が大きくなるという性質を精密に実測することにも成功。これにより、旋廻を引き起こす摩擦支点が形成される確率が左右で異なる原因となることが明らかにされたとする。
これらの発見を踏まえ、動摩擦係数の速度依存性により、左右非対称に旋廻の中心が形成されることが、ストーンが左に曲がる謎の答えと考えることが、最も合理的であることが実験的に判明したという。