物理モデルを用いる従来法でテストデータから磁場を推定したところ、ほとんどの条件において推定精度の範囲が真の磁場強度と整合していなかった一方で、機械学習を用いる今回の手法では、真の磁場強度と整合する結果が得られたとする。

これは、従来法では不可能だった正しい推定精度の取得が、今回の手法によって可能になったことを意味すると研究チームでは説明しており、真の磁場強度と推定の中心値の差を比較すると、今回の手法では従来法と比較して最大50倍程度の正確性の向上が得られたという。また、最大で1.8μTという高い正確性(地磁気の25分の1程度)が得られることも確認されたという。

  • 実験装置の模式図

    (a)実験装置の模式図。周囲の大きなリング郡が磁場を制御するヘルムホルツコイル。(b)機械学習の模式図 (出所:東大Webサイト)

さらに、カバーガラスの代わりに半導体シリコン基板上にナノダイヤモンドを散布した場合にも同様の検証が行われたところ、こちらも推定精度が正しく見積もれており、従来法よりも磁場強度の正確な推定に成功したという。これにより一般的な材料に対する、今回の手法の適用性も示せたとする。

実際に、導線を流れる電流によって生じる磁場を今回の手法によって局所的にイメージングしたところ、導線から離れるほど磁場強度が減衰する様子が確認され、実線で示されるアンペールの法則に基づくフィッティング結果と整合したという。この結果は、マイクロスケールの高い空間分解能を持つ正確な磁場イメージングに成功していることを意味すると研究チームでは説明している。

なお、ナノダイヤモンド膜はあらゆる形状の物質に付着させることが可能なため、磁性体、電子デバイス、磁性生物、鉱物などにも利用できると研究チームでは説明しているほか、今回の研究は、ダイヤモンド量子センサを用いて高空間分解能かつ正確に磁場を推定する方法の1つを提示したものであり、局所的な磁場計測が必要となる物理、生物、地学など幅広い分野の研究の発展に資するものとしている。