具体的には、グラフェン膜のH/D分離能を実験的に再現性良く検証する手法として、固体高分子形の電気化学デバイスが利用された。デバイス内の水素イオンと重水素イオンが生成される電極部位にグラフェン膜が張り付けられ、膜を通り抜けた水素イオンと重水素イオンの量を定量的に評価することでH/D分離能が精査されたところ、重水素イオンよりも水素イオンがグラフェン膜を通り抜けやすく、実験的にH/D分離能を有することが示されたという。
また、得られた実験結果について理論計算との比較検証が行われたところ、観察されたH/D分離能は、重水素イオンよりも軽い水素イオンがグラフェン膜を多くすり抜ける現象の「量子トンネル効果」に起因していることが示されたとする。
研究チームでは、今回の研究結果について、長らく論争となっていたグラフェン膜H/D分離能力と、そのメカニズムを実験および理論の両アプローチによって明らかにした重要な成果だとしており、今後は、半導体、光通信用材料、重水素標識医薬品の開発といった幅広い分野でキーマテリアルであるD2の安価な製造法として、また、将来のエネルギー源として注目されている核融合炉での水素同位体ガスの新しい精製法として期待されるとしている。