研究では、結晶の成長時間を変えることにより、酸化スズナノシートのサイズを4種類変化させたセンサ感応膜をそれぞれ作製。この内、酸化スズナノシートの成長がもっとも初期段階にあるセンサ感応膜が、ストレスガスであるアリルメルカプタンに対し、優れたセンサ応答値(約50ppm(=0.005%)で約80)を5秒以内の早い応答速度で示したという。
ストレスガスの濃度変化に対するセンサ応答値の測定により、検出限界は約200ppt(=0.00000002%)と算出された。さらに同濃度のほかのバイオマーカーガスに対するセンサ応答値は20程度であり、開発されたセンサ感応膜がストレスガスに対する優れたガス選択性を有することが示されたとする。
そして、ストレスガスをほかのバイオマーカーガスから識別するため、作製された4種類のセンサ感応膜を組み合わせたセンサアレイを開発。同センサアレイを用いて、ストレスガスおよび各種バイオマーカーガスに対する4種類のセンサ応答値が主成分分析(PCA)により解析され、PCAで得られた第一主成分と第二主成分のプロットにより、ストレスガスはほかのバイオマーカーガスとは明確に異なる領域にプロットされたという。これにより、同センサアレイはストレスガスを識別できることが確認されたという。
加えて、開発されたセンサアレイにより、ストレスガスをリアルタイムで識別できることを示すために、測定ガスを空気からストレスガスに変化させた際のセンサアレイからの応答値をプロットしたところ、センサアレイからの応答値は5秒以内に大きく変化し、かつストレスガス中でも安定した応答値が示されたとする。これにより、開発されたセンサアレイを用いて、ストレスガスをリアルタイムで識別(モニタリング)することが可能であることが示されたとする。
なお、研究チームは今後、皮膚ガス中に含まれるストレスガスをモニタリング可能なセンサデバイスの開発を行う計画としており、今回の技術を実用化することにより、ストレスケアなどの健康管理に貢献するとしている。