今回の超軽量電磁波遮蔽材料は、名大のCNTを用いて開発した超軽量材料と、パナソニック インダストリーが保有する熱硬化性樹脂の配合設計を組み合わせることにより、一般的な電磁波遮蔽材料の中でも軽量なアルミニウム(かさ密度2.7g/cm3)の約270分の1という軽量さ(かさ密度0.01g/cm3レベル)を実現。かさ密度0.01g/cm3レベルとは、発泡スチロール(かさ密度0.01~0.03g/cm3程度)と同等レベルということになる。その軽さと同時に、新材料はアルミニウムと同等の電磁波遮蔽性能に加え、アルミニウムにはない電磁波吸収性能も有しているのが特徴だという。

  • 新材料のイメージ

    新材料のイメージ。名大のCNTとパナソニック インダストリーの熱硬化性樹脂技術を組み合わせることで、アルミニウムと同等の電磁波遮蔽性能を有しながら、軽さはおよそ270分の1しかない (出所:パナソニック プレスリリースPDF)

研究チームでは、この軽量新材料を利用することで、人工衛星・探査機などの宇宙機や、ドローン・eVTOLなどの電動航空機の機器軽量化を促し、エネルギー効率を向上させることで、航続距離の伸長に貢献するとしている。

今回の新材料は、材料の組成を変更することで、機器の仕様に合わせて、遮蔽したい周波数帯域の設定が可能だという。多様化する電磁環境において効率の良い電磁波遮蔽を実現し、ノイズによる機器の誤動作を抑制するとともに、機器のEMC設計も容易にするともしている。

さらに新材料は、遮蔽性能のみのアルミニウムと異なり、電磁波吸収性能も有している点が特徴で、これによりCPUなどのデバイス自らが発するノイズの多重反射を防ぐことができ、ノイズ重畳によるデバイスの特性劣化を防止することが可能となるとする。また、これらの性能を併せ持ちながら、広い周波数帯域にも対応することで、次世代無線通信技術の普及を促進するとしている。

  • 新材料の電磁波遮蔽効果

    (上)新材料の電磁波遮蔽効果。5GHzから110GHzまでの広範な周波数帯域において、電磁波遮蔽性能が30dBを越える高い遮蔽性を有している。なお、30dBとは、入射した電磁波が電力比で1/1000に遮蔽されるレベル(今回のデータは実測値であり保証値ではない)。(下)アルミニウムと新材料の対応周波数帯域差。新材料は、アルミニウムにはない電磁波の吸収性能も有する (出所:山形大Webサイト)

なお、今回の新材料は、パナソニック インダストリーが保有する熱硬化樹脂の配合設計技術と、フリーズドライ製法によりさまざまな立体構造を作成することができ、採用機器の形状に応じた加工できることも特徴としており、今後、航空宇宙分野や次世代高速通信分野などに使用される、多種多様な機器への採用が期待されるとしており、2024年の実用化が目標とされている。

  • 研究項目と各組織の役割

    研究項目と各組織の役割。5つの研究項目すべてにおいてパナソニック インダストリーが主たる研究実施期間となる (出所:山形大Webサイト)