九州大学(九大)は8月24日、「プロトン伝導性電解質」と電極界面における歪み、そしてプロトン伝導度の関係を定量化するモデルを構築し、高性能プロトン伝導性セラミクス燃料電池セルにおける電解質中のプロトン伝導度を予測することに成功したと発表した。

同成果は、九大 エネルギー研究教育機構の山崎仁丈教授、同・兵頭潤次特任助教らの研究チームによるもの。詳細は、英国物理学会が刊行するエネルギーに関する分野全般を扱う学際的な学術誌「Journal of Physics:Energy」に掲載された。

燃料電池は水素と酸素を利用した発電システムで、「固体酸化物型燃料電池(SOFC)」は固体酸化物を電解質として用いた燃料電池となる。燃料電池にはさまざまな種類があるが、中でもSOFCは高いエネルギー変換効率を有することが知られている。ただし、現状のSOFCは動作温度が700~1000℃と高く、材料コストおよび運転コストの削減を実現するため、その動作温度を下げることが求められている。

動作温度を300~600℃の中温度域まで下げることが期待されているのが、電解質としてプロトン伝導性電解質を用いる方法だという。プロトンは陽子であり、陽子1個と電子1個からなる水素原子から電子を引きはがした水素イオン(H+)のことでもある。プロトン伝導性電解質とは、プロトンだけを選択的に通し、電子やそのほかのイオンを通さないセラミクスのような固体電解質のことをいう。

燃料電池デバイスにおいては、デバイス内部の抵抗を低減するため、15μm程度の薄膜電解質が用いられているが、燃料電池に実装されたプロトン伝導性電解質膜の抵抗値は、材料のプロトン伝導度から予測される値よりも大きくなってしまうことが各所より報告されているものの、その原因は良く分かっていなかったという。

そこで研究チームは今回、イットリウムを添加したジルコン酸バリウム「BaZr0.8Y0.2O3-δ」を対象とし、燃料電池における電解質と電極の接合界面に導入される格子歪みに着目し、プロトン伝導性酸化物における圧縮歪みとプロトン拡散係数を定量的に調べることにしたという。