その結果、プロジェニター細胞集団中に、RSPO2を発現する一群がいることが発見されたとする。また、シングルセル解析データが数理解析されたところ、これらは最も未分化な特性を持つプロジェニター細胞であり、主にRSPO2の分泌を介して周囲の細胞に作用することが予想されたという。
そこでRSPO2を抗体によってブロックし、その機能の抑制が行われたところ、腱修復過程での軟骨・骨が増え、逆にRSPO2を豊富に発現させると、腱修復過程での軟骨・骨が減ることが確認されたほか、培養細胞を用いた実験なども行われたところ、このプロジェニター細胞がRSPO2を介して周囲の細胞に作用し、軟骨や骨に分化するのを防ぎ、適切に腱・靱帯に分化するよう誘導していることが判明したという。
さらに、RSPO2を分泌するプロジェニター細胞と後縦靱帯骨化症との関連として、マウスの後縦靱帯を調べたところ、RSPO2が豊富に発現していること、ならびに後縦靱帯骨化症患者の手術の際に切除されたサンプルの解析から、骨化靱帯の周辺にRSPO2が発現していることが確かめられたとする。
このほか、後縦靱帯骨化症患者由来の細胞では、ほかの疾患の患者由来の細胞と比べてRSPO2の発現量が低いことも判明。これらのことから、RSPO2を分泌するプロジェニター細胞が後縦靱帯骨化症の発症にも関わっていることが判明したという。
なお、研究チームによると、RSPO2を分泌するプロジェニター細胞は、後縦靱帯骨化症以外にもさまざまな腱・靱帯の疾患に関わっている可能性があるという。変形性関節症や変形性脊椎症は、関節の軟骨や椎間板が変性する疾患だが、その始まりは関節や脊椎を支持している靱帯の緩みであることが一部で推定されている。今回の研究で同定されたRSPO2を分泌するプロジェニター細胞が、関節や脊椎の疾患に広く関与している可能性も考えられるという。
また、研究チームでは、すでにさまざまな疾患における腱・靱帯のシングルセル解析を進めており、今回の成果を皮切りに、加齢に伴う関節や脊椎の疾患の発症メカニズムを広く解明し、予防法や治療法の開発につなげたいと考えているとしている。