具体的には、液体中に自発的に形成される結晶前駆体を、液体のほかの部分に影響を与えることなく、周期的に消滅させる方法が開発された。この周期を調整することにより結晶前駆体の量を制御することで、結晶前駆体が結晶核形成ならびに結晶成長にどのような影響を与えるかについて、系統的な研究を行うことに成功したとする。
その結果、過冷却液体中の結晶前駆体構造をこの方法で減少させると、結晶核形成が抑制されるほか、結晶成長も遅くなることが見出されたという。
前者の結果は、結晶核形成はこれまで考えられてきたような、均一な液体からランダムに生まれるわけではなく、液体中にすでに存在している結晶と相性のいい構造を持った領域から生まれやすいことを意味していると研究チームでは説明する。また後者の結果は、結晶成長過程において結晶・液体界面に形成される結晶前駆体の存在が結晶成長を促進していることを意味していると研究チームでは説明している。
また、これらの結果は、従来理論でその重要性が認識されていなかった、過冷却液体の構造の秩序化と、それに伴う界面エネルギーの低下が、結晶核生成・成長の両過程において重要な役割を果たしていることを示しているともしており、古典的な結晶成長理論に重要な修正を迫るものになるとする。
さらに、さまざまな液体に対し、修正の度合いを評価したところ、液体における構造秩序化が発達しやすい液体ほど、従来の理論による予測からの解離が大きいことも判明。これらの知見は、結晶成長速度論の基礎的な理解に新たな知見を与えるものと期待されるとしている。
なお、今回の研究成果は、液体からの結晶化において、過冷却液体に自発的に構造のゆらぎとして形成される結晶前駆体構造が、結晶核形成のみならず結晶成長にも決定的な影響を与えることを示したものであり、融点以下の液体に関する従来の認識を、くつがえす成果といえるとしており、研究チームでは、今回の成果は、基礎面から応用面まで、大きな波及効果が期待されるとコメントしている。