大脳皮質前頭前野の一領域である「前帯状皮質」(ACC)が類似度の検出に重要であることから、同領域の神経細胞の活動が計測されたところ、ACCの神経細胞は、E1の部屋、E2の四角形の部屋、E2のショック、それぞれに特異的に反応する3つのカテゴリーに分かれることが確認された。これらは、それぞれの経験に対する情報を保持している神経細胞だという。
そして、E2直後の睡眠中に、3つのカテゴリーの神経細胞同士が同時に活動する頻度の測定が行われたところ、類似性グループでは同期活動が高い頻度で現れたのに対し、非類似性グループではほとんど認められなかったほか、E2の学習中にも認められなかったとする。この結果は、学習直後の睡眠中における神経細胞の同期活動により、類似性の検出が行われていることを示唆しているという。
さらに神経細胞の同期活動と類似性検出との関係を明らかにするため、E1特異的なACC神経細胞が、光感受性膜タンパク質「ArchT」で標識され、その活動が光遺伝学的に操作。E2直後の睡眠時に光照射でE1特異的細胞集団の活動が一過的に抑制されたところ、類似性の検出によるすくみ反応が低減したが(テスト1)、四角形の部屋に対するすくみ反応には影響がなかったという。一方、E2の学習中にE1特異的細胞集団の活動を抑制しても、類似性の検出によるすくみ反応には影響がなかったという。
これらの結果から、類似性の検出は睡眠中の神経細胞同士の同期活動によって引き起こされていること、それに対して覚醒時の学習中における神経細胞の同期活動は類似性の検出に重要ではないことが示されたという。
なお、研究チームでは今回の成果を受けて、今後、潜在意識下でアイドリング脳がどのような神経活動を行って思考しているのかという疑問に対し、実験的にアプローチすることが可能になったとする。潜在意識下でアイドリング脳がどのような情報をどのように処理しているのかを解明することは、長年人類が取り組んできた哲学的な問いに自然科学から回答できる可能性を拓いていくと思われるとしている。また、睡眠中の脳活動や睡眠法への介入により、脳が本来持つ潜在的な能力をより引き出して、創造性や課題解決力などを向上させる方法が見出されることも期待されるとしている。