具体的には、量子ドットの吸収領域制御を行った上で、ZnOナノワイヤ集合体に充填することで、混合層を1μm程度まで厚膜化。それにより、赤外光の捕集効率を高め、太陽電池の短絡電流密度として39.8mA/cm2を達成したとする。

また、コロイド量子ドット太陽電池を、従来からあるIII-V族化合物2接合太陽電池(InGaP/GaAs)に組み合わせ、新たに波長分割3接合太陽電池を作製したところ、InGaP/GaAsの2接合太陽電池の吸収端(870nm程度)よりも長波長の太陽光でも、2接合太陽電池の短絡電流密度よりも大きな17.3mA/cm2を発生させることが可能であることが示されたという。

このコロイド量子ドット太陽電池/InGaP/GaAsの波長分割3接合太陽電池の短絡電流密度は、量子ドットボトムセルの光電流で律速されることがなくなり、変換効率として、2端子接続で30.6%が達成されたという。ウエットプロセスで作製した赤外吸収太陽電池を用いた多接合太陽電池で、30%超を達成したのは世界初であると研究チームでは説明している。

  • 量子ドット太陽電池の断面電子顕微鏡像

    (上段・左)量子ドット太陽電池の断面電子顕微鏡像。(上段・中央)波長分割3接合太陽電池構造。(上段・右)波長分割3接合太陽電池を構成する、3つのセルの分光感度(灰色は太陽光スペクトル。なお、太陽光フォトン流は電子数に換算されている)。(下)多接合太陽電池。(a)太陽光スペクトルの光電変換区分の例。(b)積層型3接合太陽電池。(c)波長分割3接合太陽電池(今回採用されたタイプ) (出所:東大 RCAST Webサイト)

なお、研究チームでは今後、今回の研究を発展させ、低コストで、軽量かつ高効率な太陽電池が実現できれば、これまで設置できなかった場所や乗り物などへの利用も期待できるようになるとしている。