岐阜大学は7月26日、ポリマーに少量付加したフッ素成分がポリマーに弾かれて集まる性質に着目し、新しいタイプのエラストマーを開発。切断した傷口が自己修復により瞬時に接合し、15分程度で元通りに回復する機能を確認したと発表した。
同成果は、岐阜大工学部の三輪洋平教授、同・宇田川太郎助教、同・沓水祥一教授らの研究チームによるもの。詳細は、英オンライン総合学術誌「Scientific Reports」に掲載された。
現在の自己修復材料には、修復剤を利用するものや、加熱や光の照射によって修復が起こるものなど、さまざまなタイプのものがある。中でも、室温で、何もしなくても自発的に損傷が修復するタイプのものは、メンテナンスフリーという観点から特に有用性が高いと考えられている。
一般的に、このような自己修復性エラストマーは、互いに集まろうとする力が強い水素結合性やイオン性などの官能基によってポリマーを物理的に架橋することで得られ、架橋部位の結合交換によって自己修復を発現する仕組みとされている。
しかし、従来のマテリアルデザインでは、エラストマーの力学強度と自己修復速度の両方が、架橋部位の結合の強さに依存しており、両者間にトレードオフの関係が生じるという問題を抱えていた。つまり、素早く自己修復するエラストマーを作り出したとしても、材料としての強度が弱く、実用に耐えられない可能性があったという。
そこで研究チームは今回、アクリル酸メチルとアクリル酸エチルの共重合体に、ごく少量のフッ素成分を“枝”として付加した「フッ素ポリマー」(PolyF)を合成することにしたという。