実際には、宇宙論パラメータを変えた100通りほどの模擬宇宙を、NAOJ 天文シミュレーションプロジェクト(CfCA)が運用する天文学専用スーパーコンピュータ「アテルイII」を使ってシミュレーションを実施。その結果をAIに学習させ、エミュレータが開発された。同エミュレータを使うことで、シミュレーションを実際に行わなくても、実施したのと同程度の精度で、模擬宇宙の計算ができるようになったという。
そして同エミュレータを用いて、SDSSで得られた銀河の観測データからの宇宙論パラメータの推定が行われたところ、現在の宇宙における凹凸の度合いを表す宇宙論パラメータを、約5%の精度で測定することができたとする。これは、従来の解析方法では達成されていなかった高精度だという。
近年、これまで定説とされてきたΛCDMモデルに綻びがある可能性が、複数の大規模観測の結果から指摘されつつあり、今回開発されたAIを用いた解析手法は、この指摘に対してこれまでとは異なる視点から答えを出せるものだと研究チームでは説明している。また、今後については、さらにエミュレータの精度を高めて、すばる望遠鏡において2024年から運用が始まる「超広視野多天体分光器(PFS)」を用いた観測による新たな銀河地図に用いることで、宇宙を特徴づけるダークマターの総量やダークエネルギーの性質の解明につながることが期待されるとしている。