onsemiが注力するSiCパワー半導体

世界的にカーボンニュートラルが重視される中、温室効果ガスの削減と高出力を両立するSiCパワー半導体が存在感を増している。林氏は、onsemiにとってもこの分野は非常に重要だと語る。

「温室効果ガスの削減や環境問題の解決をミッションとして掲げる中で、ハイパワーかつ環境への貢献が期待できるSiCデバイスには非常に注力している」とし、オートモーティブとインダストリアルの両分野において有効な活用を見込んでいるという。

特に高電圧化へのニーズが高まるEV分野での事業展開が進んでいるとのことで、「我々はラインナップとして、650V、900V、1200V、1700Vに対応する製品を用意しており、ハイパワー化への要望に対応できる状態になっている」と明言した。

SiCデバイスにおけるonsemiの強み

注力分野としてSiCデバイスを強調する林氏だが、世界的に注目度が高まるパワー半導体は、その分競合も多い領域となる。その中でonsemiが発揮する強みについて尋ねると、林氏は即座に2つの点を挙げた。

「我々はパワー半導体分野で20年以上かけて蓄積した技術やノウハウを活用し、オン抵抗を非常に低く抑えることができる。また、パッケージを小型化する技術も熟練されている。

この2つを組み合わせることで、より小さいデバイスに、より高い性能を実装することができる点で、差別化を図っている。」

加えて特にEV分野について、「搭載される部品数が増加傾向にある中で、オン抵抗が低く小型化されたデバイスへの需要が高まっており、今後さらに大きな差別化につながると考えている」と自信をのぞかせた。

SiC半導体の垂直統合生産体制を構築

林氏はさらに、SiCパワー半導体分野におけるonsemiの強みとして、垂直統合型の生産能力を持つ点を加えた。同社は重要視するこの分野に対する投資を積極的に行っており、2021年にはSiC製造を行うGT Advanced Technologies(GTAT)を買収している。

「今後、EVや充電ステーションの普及、FAの浸透が進むことで、SiC半導体の需要が急速に広がることが考えられる。我々はSiC半導体製造の全工程を自社で保有しているため、需要が急増した場合でもしっかりと応えることができる準備があるのが強みだ」とする。

  • onsemiが保有するSiCの製造ライフサイクル

    onsemiが保有するSiCの製造ライフサイクル(提供:onsemi)

onsemiが描く今後の事業拡大戦略

過去最高益を更新するなど業績を伸ばしているonsemiは、今後会社としてどのような動きを行っていくのか。さらなる事業拡大に向け、企業買収とパートナーシップ拡大のどちらを手段とするのか、という問いかけに対し、林氏は基本的な考えとして、独自の技術を持つ企業へは買収を含む投資をいとわないと話した。

業界で広く普及している汎用的な技術については買収で取り込む必要がないとしたうえで、「代替できないユニークなテクノロジーを持つ企業に関しては、積極的にonsemi内部へと取り込んでいくつもりだ」とし、効率的な生産体制の構築を行うと強調した。

生産能力最適化を積極的に推進

さらに同社は、2021年に発表したファブライト化戦略を変わらず継続しているといい、「今後はサブスケール工場にはフォーカスせず、300mmの生産が可能な生産拠点への投資を重点的に進めて、全体としてのキャパシティを広げていく予定だ」と林氏が語るように、2022年には米メイン州やベルギーのサブスケール半導体工場を売却するなど、生産力の改編を大胆に進めている。

また、特に重点をおいて投資を進めるニューヨーク州イーストフィッシュキルの300mm工場ではすでに量産が開始され、今後フル稼働に向けてさらに生産量を増やす見込みとするなど、生産拡大にもめどが立っており、半導体製造装置の不足が叫ばれる中でも、十分な製品を提供するキャパシティが用意できているとのことだ。

また日本国内についても、8インチの生産が可能な会津工場への投資を継続的に行っているといい、今後もキャパシティの拡張を行う予定だとする。ただ、会津工場の拡張については半導体装置不足の影響も大きく、林氏も苦笑するばかりだった。

SiC生産技術の革新にも注力

前述のとおり垂直統合生産を行うSiC半導体の事業展開について、「今後も基本的には自社での生産を行っていく」と力強く語る林氏は、SiCのウェハレベルについても見通しを語った。

「現状のウェハサイズは6インチだが、今後は当然大型化を目指していくことになる。今明らかにできる予定はないが、8インチ化に向けた取り組みはしっかりと進めている」(林氏)

GaNなどの新素材も発展が期待される中、onsemiはSiCの生産に対して完全に注力しているとのことで、林氏は今後の需要の広がりに期待をのぞかせながら、垂直統合生産による供給量の安定に力を入れる姿勢を改めて明らかにした。