慶應義塾大学(慶大)は7月20日、砂糖の主成分である「スクロース(ショ糖)」と、天然甘味料および食品添加物として使用されている低カロリー単糖「L-アラビノース」という、腸内細菌によって利用される2つの糖が、特定の腸内細菌に協調的に作用することにより、高脂肪食誘導性の肥満を抑制することを発見したと発表した。

同成果は、慶大大学院 薬学研究科の冨岡佐和子大学院生(研究当時)、慶大薬学部の関夏実特任助教(研究当時)、同・金倫基教授らの研究チームによるもの。詳細は、ライフサイエンス全般を扱うオープンアクセスジャーナル「Cell Reports」に掲載された。

食物繊維はヒトの酵素で消化・吸収できない難消化性の糖類だが、一部の腸内細菌によって利用されることが知られており、そうした難消化性・難吸収性の糖は近年、「腸内細菌利用糖(MACs)」と呼ばれるようになっている。

どのMACsを栄養源として利用できるかは、腸内細菌ごとに異なるが、中にはMACsを主要なエネルギー源として発酵・分解する際に、短鎖脂肪酸などのヒト(宿主)に有益な代謝物を産生するものもいるという。

L-アラビノースも小腸で吸収されにくく、腸のスクラーゼ活性を阻害することによって、砂糖の主成分であるスクロースの吸収を減少させるという特徴を持ったMACsの一種として知られいることから、研究チームは、L-アラビノースとスクロースを同時に摂取することにより、両者がMACsとして機能し、腸内環境改善に相乗的な効果を発揮する可能性を考えたという。

しかし、L-アラビノースとスクロースが協力して腸内細菌叢に作用し、宿主機能を促進するかどうか、また両者が腸内細菌にどのように作用するかは不明であったことから、L-アラビノースとスクロースの腸内環境に及ぼす協調作用について明らかにすることが目的とした研究が行われることになったとする。