QRコードで消費者に生産データを見える化
清水氏は、デンソーの食品消費に関する取り組みとして、フードバリューチェーンにおけるQRコードを活用したデータ連携の実証実験についても紹介した。
現在の食品業界では、商品が生産者から消費者に届くまでに複数の業者が介在するため、商品に関する情報が共有されにくく、産地偽装などの問題が発生している。また、中間卸が介在することにより需要予測が困難になり、生産過多や売れ残りによるフードロスにつながっているという。
デンソーはこれらの課題に対し、QRコードの活用によって生産者から消費者まで正確に情報共有ができる環境の構築を目指している。
QRコードによる商品のデータ連携はすでに実証実験が行われており、生産地で登録された製品データを物流倉庫・販売店で活用することで、業務や販売の効率化を行っていくという。
また、2022年に産地偽装問題が明らかになった熊本県産アサリについても、同年6月に県とデンソーで覚書を締結し、適正な流通体制の構築に向けてQRコードによる産地証明支援システムの実証を開始している。また同システムは、既存のシステムにデンソーの技術を加えることで、スムーズな導入を可能にするとのことだった。
これらの取り組みについて、清水氏は「我々は産地偽装防止を目指す気は一切ない」と語る。
「産地偽装対策が目的ではなく、ちゃんと生産されたものに適切な価値が付き、正当な対価が払われる世の中を目指して、産地証明を行っていく」と強調した。
正の循環を生む食品業界の構築へ
清水氏はデンソーが目指す先として「商品に対して正当な価値がつく世の中」を挙げた。
「商品に関する情報プラットフォームを活用することで、効率的な流通を行い、消費者が適切な価値を払い、商品に対するフィードバックを生産者に届けることで改善が行われるという"正の循環"を実現したい。そのために我々は、それぞれの領域でサービスを提供していく」とした。