2022年通年売上高は前年比35%増に上方修正
TSMCでは2022年第3四半期の業績を以下のように予想している(為替は1ドル=29.7NTドルと仮定)。
- 売上高:198億ドル~206億ドル(前四半期比9~13%増)
- 売上高総利益率:57.5%~59.5%の間(前四半期とほぼ同じ)
- 営業利益率:47%~49%(前四半期よりやや低め)
同社では、第3四半期のガイドライン策定に関して「ドルとNTドルの為替レートは有利に働くが、インフレや材料コストの上昇による影響を考慮した」と説明している。
同社のC.C. Wei(魏哲家)最高経営責任者(CEO)は説明会の席上で、半導体サプライチェーンで過剰在庫の状況が見られ、同社の顧客による在庫調整が2023年上半期まで1年近くの間、続くとの見方を明らかにしたが、HPCやIoT向けなどが下支えとなり、同社自体は成長を維持できるとして、2022年の通年のドルベース売上高予測を従来予測の前年比25~29%増から同35%増へと上方修正した。中でもHPC関連は、顧客と長期的な提携関係にあり、その需要は生産能力を上回っているとしており、2022年は逼迫した状態が続くと説明したほか、CPU/GPUや人工知能(AI)、5Gスマホ関連で需要が拡大していることもあり、今後、数年の売上高は年平均成長率15~20%を達成できるともしている。
設備投資は抑制気味も3nmは予定通りに2022年下期に量産を開始
同社のHuang CFOは、2022年の研究開発/設備投資費用を年初に400億~440億ドルと見積もっていたが、現状としては「目標値の加減に近い規模となる」とし、一部の設備投資を2023年に延期することを明らかにした。この背景には、製造装置の調達に問題があるためとしている。 ただし、最先端プロセスの開発状況については、3nmプロセスの量産を2022年下半期に予定通り開始し、2023年上半期から売り上げに貢献し始めると説明。3nmの強化版となるN3Eは3nm量産の1年後から量産に入るとした。2nmプロセスについては、2024年にリスク生産、2025年に量産をそれぞれ開始する見通しだともしている。
なお、これらのほか、C.C. Wei CEOは、以下のような注目すべき発言をしている。
- 米国では、熊本のJASM(Japan Advanced Semiconductor Manufacturing)ような、顧客の半導体企業と合弁会社を設立する予定はない。あくまでも自社100%所有とし、世界中の顧客に等しくサービス提供するのがTSMCの基本方針である。
- TSMCの3D IC事業の成長は健全であり、予想より少し早く進んでいる。3D IC研究開発センターを日本に設立したのは、3D IC製造用原材料の技術は日本が進んでおり、とりわけパッケージ基板技術は日本が世界一だからである。TSMCは、これらの技術を入手して、世界中の顧客により良いサービスを提供するのが目的である。
- TSMCの生産受託の価格や材料高騰による値上げの噂などに関しては、顧客との個別のプライベートな契約であるから一切コメントは控える。