そこで今回の研究では、動物病院の協力の下、日本で飼育されているペットネコ50匹の血清を収集。ポリ塩化ビフェニルおよびポリ臭素化ジフェニルエーテル、それに加えて両者の水酸化体の濃度を測定するとともに、研究チームが開発した高感度・高精度な甲状腺ホルモン濃度の測定法を用いて、汚染レベルと甲状腺ホルモンレベルとの関係を解析することを目指したとする。
その結果、ネコ血清中のポリ塩化ビフェニルおよびポリ臭素化ジフェニルエーテル濃度と、甲状腺ホルモン濃度との間に有意な負の相関が認められたとする。これは、有機ハロゲン化合物の曝露が、ネコの血中甲状腺ホルモンレベルを低下させている可能性を示すものだと研究チームでは説明する。
また、多変量解析ツールで血清中のメタボロームデータと、有機ハロゲン化合物曝露レベルとの関係を解析したところ、親化合物のポリ塩化ビフェニルおよびポリ臭素化ジフェニルエーテルと、両者の水酸化体の血清中残留レベルが、それぞれ独自にネコの代謝活動に影響を与えていることも判明。汚染物質によって異なる毒性影響が示唆される結果を得たともしている。
特に、ポリ塩化ビフェニルはグルタチオン代謝やプリン代謝を含む多くの代謝経路に影響を及ぼしていることが示され、ポリ塩化ビフェニルの曝露がペットのネコに慢性的な酸化ストレスを引き起こしていることが示されたとする。
なお、研究チームでは今後、甲状腺ホルモン生成過程におけるポリ塩化ビフェニル曝露の影響について、詳細に解析を進める必要があるという。ポリ塩化ビフェニル曝露による酸化ストレスはがんや心筋こうそく、生活習慣病と深く関連していることが知られているためで、ポリ塩化ビフェニル曝露とネコの疾病との関連についての解明が必要だとしている。